研究課題/領域番号 |
21K04733
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
足立 振一郎 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 主任研究員 (50359410)
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研究分担者 |
山口 拓人 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 主任研究員 (20530041)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 低温プラズマ窒化処理 / 二相ステンレス鋼 / レーザメタルデポジション / 耐摩耗 / 耐腐食 |
研究実績の概要 |
合金元素を含まない鉄鋼の常温における金属組織は,体心立方格子構造のフェライト相であるが,ニッケルなどオーステナイト相を安定化する効果のある元素を添加すれば,常温でも金属組織は面心立方格子構造のオーステナイト相となる.ステンレス鋼にはフェライト系ステンレス鋼とオーステナイト系ステンレス鋼があり,さらにフェライト相とオースイテナイト相が混在した二相ステンレス鋼がある.二相ステンレス鋼は強度が強く,耐孔食性に優れ応力腐食割れを起こしにくいなどの特徴がある.レーザメタルデポジションにおいても二相ステンレス鋼の利用が期待されている.一方,二相ステンレス鋼は耐摩耗性がオーステナイト系ステンレス鋼と同様に劣っているため,改善が求められている. そこで,オーステナイト系ステンレス鋼の粉末にフェライト相を安定化する効果のあるクロム粉末を添加することで,二相ステンレス鋼のクラッド層の作製を検討した.その結果,クロム粉末の添加量が一定値を超えるとフェライト相が出現し二相ステンレス鋼となることが判明した.二相ステンレス鋼クラッド層の金属組織は,バルク材ステンレス鋼と大きく異なっていたが,低温プラズマ窒化処理により窒素が過飽和に固溶した拡張オーステナイト相(S相)が表面に形成することが確認された.形成したS相のビッカース硬さは,オーステナイト系ステンレス鋼であるSUS316Lクラッド層に形成したS相とほぼ同様の硬さを有しており,表面硬さの向上が認められた.また,耐腐食性に関しても,アノード分極測定の結果から窒化処理による改善効果が確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レーザメタルデポジションにより二相ステンレス鋼のクラッド層を作製し,さらに低温プラズマ窒化処理によりS相を表面に形成することが出来た.これにより,二相ステンレス鋼の課題である表面硬さの改善が実現できた.
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今後の研究の推進方策 |
レーザメタルデポジションによる二相ステンレス鋼層へ低温プラズマ窒化処理によるS相の形成を最適化するために,クラッド層の合金組成の探索,S相の生成メカニズムの解明を行い,S相のさらなる特性向上を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた実験の一部が実施できなかったため,残金が生じた.次年度に実施するための費用として使用する.
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