研究課題/領域番号 |
21K04736
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
奥村 圭二 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50204144)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ネオジム磁石 / 高温溶媒抽出法 / ビスマス / リサイクル |
研究実績の概要 |
EVやHEVの普及により今後益々需要が増大すると予想されるネオジム磁石の安定製造のためのNdやDyのような希少金属リサイクルが重要となる。本研究では廃ネオジム磁石からのNdやDyの新たな回収技術を開発する。従来、廃ネオジム磁石のリサイクル法として湿式処理が行われているが、強酸などを用いた多段のプロセスであるため、廃液の量が多くなり、そのため国内では廃液の処理に対する環境コストが大きくなってしまう問題を抱えて いる。一方、廃液を出さない乾式処理によるリサイクルが着目されている。乾式処理の中で、溶融金属を用いた分離回収法に着目し、溶融金属と希土類金属による親和性から化合物を形成することでネオジム磁石中から希土類金属を抽出、回収するものである。本研究では第二相溶媒金属としてBiを用いた方法を提案し、従来検討されてきたMg、Ag、Cuなど よりも低価格で安全性が高く、エネルギーコストを抑えることができる。 令和5年度は令和4年度に引き続き、処理温度の低温度化を目指してAlを添加した実験を行ってきた。アルミナるつぼに試料を装入し、電気炉内で、アルゴン雰囲気中で600℃~900℃の間の所定の温度および時間で保持して反応させた。また、Alの代わりにZnを添加した実験も行った。実験後の試料を切り出し、樹脂に埋め込んで卓上研磨装置で研磨して SEM観察に供した。AlまたはZnを添加することにより Fe-Al合金またはFe-Zn合金として試料の融点を下げることが可能となった。試料は、SEM観察及びSEM-EDX観察によりBi、Nd、 Fe、Al、Zn及びOの組成マッピングを行うことで、NdがBi中に回収されたかを確認した。その結果、NdはBi中に90%以上回収できていることが分かった。またX線構造解析を行うことで、実験後の試料がどのような状態(化合物または固溶体)で存在しているか確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、処理温度の低温度化を目指した実験を行った。電気炉に試料を装入したる つぼを入れ、アルゴン雰囲気中で600℃~900℃の間の所定の温度および時間で保持して反応させた。AlおよびZnを添加することによりFe-Al合金およびFe-Zn合金として試料の融点を下げることが可能となった。試料は、SEM観察及びSEM-EDX観察によりBi、Nd、Fe、Al、Zn及びOの組成マッピングを行うことで、NdがBi中に90%以上回収されたのを確認した。ま たX線構造解析を行うことで、実験後の試料中にNdがどのような状態(化合物または固溶体)で存在し ているか確認を試みたが、Bi中のNd濃度が低くて、化合物として同定することはできなかった。また、Fe-Al中にBiが、またBi中にFeが分散していることを確認した。反応促進のため、溶融試料を攪拌するため、比重差で2液相が十分分離するように2時間の保持時間が必要であることがわかった。Bi中に抽出分離されたNdについて、化学分析を行った。Ndを抽出したBiを塩酸でNdを浸出させ、浸出液をICP分析してNdの回収率を 測定した結果、70%以上の回収率が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、令和5年度に引き続いて研究を行っていく。また、スケールアップ実験も行う。試料を100g程度用いて、同様に実験を行い解析する。反応温度、反応時間、混合比、粒子径等、工業化に向けて最適な条件を調査する。ネオジム磁石中のDyについても同様に回収実験を行い、Nd回収との比較を行う。回収率の向上のための条件を明確にする。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験室の移転および設備の移設と立ち上げを行ったため、令和5年度に当初計画していた実験を一部行うことができなかった。そのため次年度使用額が発生した。令和6年度は計画通り実験を遂行していく。
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