研究課題/領域番号 |
21K04738
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
藤野 茂 九州大学, グローバルイノベーションセンター, 教授 (10304833)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | シリカガラス / 3D プリンタ / 付加製造法 / 光造形 / 粉末焼結 / 透明 |
研究実績の概要 |
光・電子部品産業ならびに医療機器向けに、安価で複雑形状を有する3次元構造ガラス(3Dシリカガラス)の開発が望まれている。しかしながら、製造プロセスの複雑さ、多大な熱エネルギー消費等の問題により、3Dシリカガラスの研究開発の進展は樹脂や金属に比べ遅れている。本研究では基礎的見地から未だ解明されていない光造形法による3Dガラス製造プロセスの提案を行い、製造プロセスの材料設計指針を明らかにする。具体的には出発原料である光硬化性モノマー溶液中のシリカ粒子の分散・凝集状態特性を実験的に把握するため、シリカ分散スラリーの粘度に及ぼすモノマーの影響について溶解度パラメータ(SP値)を用いて考察する。更には、スラリーに対するLED光照射エネルギーと光硬化速度との相関を明らかにし、シリカガラスの光造形プロセスの解明することを目的とする。 従来、ガラス、セラミックスをはじめとするバインダーを用いた機能性複合材料製品は原料粉末を分散媒中に分散させたスラリーの状態で扱われ、その後の工程として、脱水、乾燥などを得て最終製品となる。すなわち、出発原料であるスラリー特性の十分な理解と制御が重要となる。 本年度は光硬化性アクリルモノマー溶媒の選定と設計に際し、分子間力が近い値の物質同士ほど均一に分散すると仮定した溶解度パラメーター (SP値)に着目し、種々の分子構造を有するモノマーのSP値をFedors法により求め、シリカ粒子とモノマーの相互作用の指標として粘性測定を行った。その結果、 SP値の違いすなわち、モノマーの分子構造の違いにより、シリカ粒子の分散性を向上させる糸口を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
水溶液中における粒子の挙動についは粒子間相互作用(ファンデルワールス力、静電相互作用)が関与するDLVO理論がある。希薄系の単一粒子に関しては、DLVO理論に基づいた研究が進展している。本研究では粒子の体積分率を高めた濃厚系において進めた結果、光硬化性モノマー溶液中のシリカ粒子の分散性はシリカ粒子とアクリルモノマーその相互作用を実験的に行うことで、これまでに観測されていない、高濃度シリカガラススラリーの作製が可能となりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今後、高濃度シリカガラススラリー作製プロセスに与えるモノマーの役割として、分子構造の凝集エネルギー密度とモル分子容の観点から考察を行う。その成果をもとに、シリカ/モノマースラリー分散液を調製し、粒子沈降中の光硬化照射エネルギーと硬化速度の関係を明らかにすることで、光硬化速度に及ぼすモノマーの寄与を明らかにする。最終的には、上記の知見をもとに、ガラス成形体形成メカニズム更には、ガラス焼結体の構造解析、光物性として透過率の評価を行う。
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