研究実績の概要 |
銅製錬をはじめとして非鉄製錬では、しばしばヒ素が鉱石中に含まれており、製錬工程で分離されている。ヒ素は有害金属であり、厳しい環境規制が導入されているために大きな市場を持たず、通常は安定化して保管されている。結晶質のヒ酸鉄であるスコロダイトは安定であるためヒ素固定のための適切な化合物といえる。本研究ではスコロダイトを生成するための安定で安価な新規プロセスの開発を目指す。そのために、非晶質のヒ酸鉄を経由して気相中にて結晶化させる方法、すなわち固相変態によるスコロダイトの生成を対象として取り上げ、結晶化の挙動と生成物の性状に及ぼす各種の結晶化条件の影響を系統的に明らかにすることを目的とした。 今年度は、非晶質ヒ酸鉄試料の固液分離方法が結晶化に及ぼす影響を調査した。さらに、非晶質ヒ酸鉄試料を加圧下で保持する結晶化実験を実施した。加圧保持下での温度や加圧力が結晶化に及ぼす影響を調査した。 以上を含めて、研究期間全体を通して以下を明らかにした。温度や圧力を制御して結晶化を行う装置を設計・製作した。さらに、出発原料として非晶質ヒ酸鉄を作製した。製作した装置を用いて基本となる実験条件や手順といった実験方法を確立した。その上で、各種結晶化条件の下で保持実験を行った。保持実験で得られた試料について XRD, TG/DTA, SEMにより性状を調査した。それにより、結晶化の挙動と生成物の性状に及ぼす各種の結晶化条件の影響を系統的に調査した。その結果、120 ℃付近でスコロダイトが生成することが確認された。120 ℃以上ではスコロダイトに加えてFe2SO4・0.75H2Oが生成し、温度が高いほどFe2SO4・0.75H2Oの占める割合が増加した。また、加圧力がスコロダイトの結晶化に及ぼす影響は見られなかった。広い条件で固相変態によってスコロダイトが生成することが確認できた。
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