研究課題/領域番号 |
21K04740
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
小塚 敏之 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (60205424)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 陽極酸化膜ナノポアの形態制御 / 強磁場印加 / アルミニウム |
研究実績の概要 |
宇宙までを見据えた輸送機械,建材,生活用品と広く応用されるアルミニウム,チタンなどの金属の表面処理としての陽極酸化処理に着目し,硬度,強度,高機能性を付与する酸化皮膜の特性向上を目的として,強磁場,強電場を皮膜形成時に印加することで,皮膜内のナノポアの形状制御を試みた。今回はシュウ酸浴を用いて基盤上に均質なナノポアを有する酸化被膜を生成し,磁場印加によるナノポア径の変化を確認した。8Tまでの強磁場印加では,磁場強度に伴って,ポア径が小さくなることが判明し,同一の処理時間では膜圧が増加することが見いだされた。理論的には,ナノポア内での不均一分布を示す電流と強磁場と相互作用によりナノポア内を壁面に沿った微視的な渦流により,イオンの移動が促進され,ポア内物質移動律速からバリア層における拡散律速に遷移して,ポア径を増大させるより,より深く酸化が浸透する現象が生じていたためと考えている。 さらに印加磁場を陽極酸化中に変化させることにより,ポア径を同期させて制御できる技術を確立した。本技術はナノポア構造を3次元的に制御できる可能性を示すものであり,産業界,学術界に与えるインパクトは非常に大きいと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は磁場印加,電場印加の基本的な現象理解としていた。3年度は結果として8Tまでの強磁場印加によって,ナノポア形状のサイズ,酸化皮膜の膜厚の制御性を確認した。電場印加については,電極形状と配置について最適な実験条件を未言い出すところまでで,年度を終了した。完全に当初の予定通りではなかったが,磁場の連続変化によるナノポアサイズの応答性,制御性を確認したことなど,当初予定していたよりも非常に興味深い,かつ学術的にインパクトのある現象も発見しており,総合的に判断して順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
強電場印加の最適な電極配置を見出し,その実験結果を早い段階でまとめる。印加磁場の磁場変化に同期するポア形態については既に一部結果を得ており,それをさらに充実させる。磁場印加の結果と電場印加の結果をそれぞれにまとめ,それらがナノポア形態に与える影響を明確にして,磁場と電場の重畳印加による,ナノポアのサイズ,直線性,間隔,配列性の同時制御を実現する。将来的に機能性酸化皮膜に要求される光触媒特性,バイオセンサー特性,分子フィルター特性,カーボンナノ材料・電子デバイスのプラットフォーム特性,強度指向性材料特性を日本金属学会,表面処理学会などを通して国内外に発表して,この分野の新たな局面を提供することを最終的な目標としている。
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