研究課題/領域番号 |
21K04748
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
多島 秀男 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (90456351)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ハイドレート / ガス分離 / 気液固三相 / 物質移動 |
研究実績の概要 |
本研究では,申請者所有のハイドレート形成・分解装置を改修利用してハイドレート化ガス分離プロセスでの物質移動特性を明らかにすることを目的とし,特に物質移動係数への種々の因子の影響に注目した。 本研究では,特に2つの課題をそれぞれ検討することにより,ハイドレート化ガス分離プロセスの新たな分離性能評価や設計指針の創出を目指している。本研究では温暖化ガスでありかつ低圧モデルガスとして主にR134a,R32,R410A,六フッ化硫黄,および窒素との混合ガスを用いた。令和4年度は,ハイドレート反応器の再改修及びハイドレート形成・ガス吸収時の物質移動特性の評価方法の検討(課題1)と,補足試験の凝集抑制物質添加時のハイドレートスラリー粘性(課題2)の評価に着目した。 課題1 物質移動特性:申請者らのハイドレート化装置の反応器部分の改修を行った。これまでよりもスラリー流動性・粒子回収を改善することができた。物質移動容量係数の観点からは既往の研究と同等の結果を得ることができた。ただし比表面積評価法を検討する必要があることが示唆された。改良中にはこれまでのデータを再整理・再検討し,ハイドレート形成中の物質移動係数は昨年度とは別にガス-スラリー系の物質移動として工学的無次元式で整理することが有効であることを示した。 課題2 スラリー流動性評価:補足試験として現有する水平ループ管型のスラリー流動解析装置から温度圧力一定条件の下で純ガス(SF6)ハイドレートスラリーの凝集抑制物質添加時の流動性と粘性を評価した。同じ粒子ホールドアップでも粒子分散時にはスラリー相対粘度が低下することを明らかにした。また,疑似2次元気泡観察装置による観察の結果,セミクラスレートハイドレートスラリー中では気泡合一や分裂が起こりにくくなることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,ハイドレート化ガス分離プロセスでの物質移動特性を明らかにすることを目的とし,特に物質移動係数への種々の因子の影響に注目している。 令和4年度は,広範囲流速でのデータ取得を目指した反応器も含めた塔径の改修を行った。これらの改修による新規データの取得,既得測定データの再解析,粒子凝集性試験として純ガスハイドレートスラリー粘性の検討を行った。これらは当初計画に基づいたものである。 装置改修では,塔径を取るためにスタティックミキサーをサイズアップした。スケールアップ後はミキサー内でエレメントのひねりに沿って気泡が上昇し,その剪断力により大気泡と微小気泡が発生することが示唆された。気液流速の増加によりハイドレート生成過程では物質移動容量係数が減少傾向にあった。これは気泡径増大に伴うものと推測される。ハイドレート生成過程の物質移動容量係数は溶解過程の約40倍であり,装置改修前と同様の検討が可能であることが分かった。ただし,微細気泡を含む比表面積評価法については次年度引き続き検討する。既得データを再解析した結果,気泡-スラリー系での物質移動として無次元式で整理することが有効であることを示した。粒子挙動評価に関しては,引き続き凝集抑制物質添加時にハイドレートスラリー粘性評価を行ったところ,同じ粒子ホールドアップでも粒子分散時にはスラリー相対粘度が低下することを明らかにした。また疑似2次元気泡観察装置を試作し,大気圧下, 38~53 マイクロメートルのガラスビーズ粒子と臭化テトラブチルアンモニウムハイドレートスラリーの気泡・固体流動挙動を比較した結果,ハイドレート粒子中では気泡合一や分裂が起こりにくくなることが示唆された。 以上の結果より,令和4年度の本研究計画は当初計画通りほぼ進行しているといえ,「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度に引き続き,ハイドレート形成時の物質移動特性および粒子凝集性試験の流動特性に着目するとともに,最終年としてハイドレート分解時の物質移動に関する解析を進める。 物質移動特性については,前年からの引継事項である比表面積評価法を再検討し,これらの結果をもとに物質移動係数を正しく評価する。ハイドレート生成時はガス-スラリー系の物質移動として無次元式の適用範囲を広げることを目標として実験データの蓄積を図る。ハイドレート分解時についても気泡発生挙動やハイドレート粒子分解挙動を種々の条件で観察・解析するとともに,それらの結果をもとに同様の無次元式の可用性について検討する。 流動性に関しては,引き続き疑似粒子や凝集抑制物質添加による粒子挙動評価を流動装置と疑似2次元気泡観察装置による気泡や固体の流動性について無次元式による整理を行うための知見を得ることを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
反応器塔径の改修も含め昨年の繰越金も含めてほぼ予定通り使用された。しかし,当初計画に基づく情報収集・発表のための旅費については,国内会議がオンライン参加になったことにより,旅費相当分の支出がなかった。令和5年度開催になった国際会議等参加費用などに充当する予定である。
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