研究課題/領域番号 |
21K04749
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
渡邉 貴一 岡山大学, 自然科学学域, 研究准教授 (60743979)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 液滴内相分離 / マイクロ流路 / in situ観察 / 非平衡 / 多層化 |
研究実績の概要 |
マイクロ流路内を流れる多成分系液滴(例:高分子/良溶媒/共溶媒)の内外で、急激な温度変化や高速な溶媒の移動を誘起すると、液滴内で逐次的な相分離と高分子析出が同時に進行する非平衡状態となり、回分式反応器では形成が困難な鈴型構造や共連続構造などの多彩かつ階層的な相分離構造を有する微粒子が連続的に生成される。しかし、これら階層構造の形成機構や制御方法は未解明である。本研究では、マイクロ流路内の多成分系液滴において、非平衡相転移を誘起する因子を探索し、溶媒拡散の速度や微粒子の固化時間、液滴の粘度変化が微粒子の構造に及ぼす影響を明らかにする。 2022年度は、液滴内における非平衡相分離現象を「重合を伴わない実験系」に拡張することを検討した。具体的には、酢酸セルロース微粒子が析出する系に、良溶媒とともに貧溶媒を加えることによって逐次的な相分離が起こるか検証した。この系に貧溶媒としてヘキサデカンと酢酸エチルを加えると、カプセル形成過程において、内部でも微粒子形成が進行し、一般的なカプセル構造だけでなく、多層構造を有するマイクロカプセルも再現性良く得られることを見出した。さらに、この層構造の層数は、初期液滴径が大きいほど多層化しやすく、析出までの時間が短いほど、層数が低下することも観察された。初期組成が同様でも、液滴の固化速度を変更することによって、非平衡構造を制御できることがわかった。また、この現象はバッチ系でも観察されるが、マイクロ流路を使うことによってはじめて精密制御できることも明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画になかった、重合を伴わない系へも非平衡相分離現象を使った微粒子調製法を拡張できたため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは、マイクロカプセルの多層化に特化した非平衡相分離現象を取り扱ってきた。この場合は、できるだけ長時間、相分離を進行させる必要がある。今後は、非平衡相分離を任意の位置で固定化するための技術開発を進める。
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