マイクロ流路内を流れる多成分系液滴(例:高分子/良溶媒/共溶媒)の内外で、急激な温度変化や高速な溶媒の移動を誘起すると、液滴内で逐次的な相分離と高分子析出が同時に進行する非平衡状態となり、回分式反応器では形成が困難な鈴型構造や共連続構造などの多彩かつ階層的な相分離構造を有する微粒子が連続的に生成される。しかし、これら階層構造の形成機構や制御方法は未解明である。本研究では、マイクロ流路内の多成分系液滴において、非平衡相転移を誘起する因子を探索し、溶媒拡散の速度や微粒子の固化時間、液滴の粘度変化が微粒子の構造に及ぼす影響を明らかにする。 2023年度は、2021年度に検討した多層マイクロカプセル形成における相分離を途中で停止させ、Spinodal分解型相分離構造を有する微粒子の調製を試みた。分散相の三角相図を作成し、共焦点レーザー顕微鏡観察により、Spinodal分解を誘起する組成を見出した。その組成となる分散相を用いて微粒子を調製した。具体的には、モノマー、水、エタノール、界面活性を有するナノ粒子を懸濁した分散液を用いてマイクロ流路内で液滴を形成した。その後、エタノールが連続相(シクロヘキサン溶液)に拡散するとともに、液滴内でSpinodal型相分離が起こり、共連続構造微粒子が形成された。興味深いことに、相分離が固定化されると、液滴は粘弾性を示し、流路底面で回転するとともに非球形構造に変形することが観察された。流路の向きを水平から鉛直に変更して同様の検討をおこなうと、球状の共連続構造微粒子が得られた。本検討により、新たな共連続構造微粒子のフロー合成技術が提案された。また、このような相分離を使った微粒子調製では、液滴の三次元的な配置も最終形状に影響を与え得ることがわかった。
|