本研究では、単一物質の触媒に比べて性能の向上、用途の拡大、長寿命化などのメリットが期待できる、異物質を付着させた触媒粒子(複合触媒粒子)に対して、エアロゾルプロセスを利用した粒子合成や物質付着を気相中で行う作製手法を開発する。さらに作製した粒子の触媒活性を評価し、粒子性状との関係を調べることで、本手法の有用性を確認するとともに望ましい複合触媒粒子の性状を見出す。本年度までの研究成果の概要は、以下のとおりである。 1.CVDで作製したナノ粒子と蒸発-凝縮プロセスで作製したナノ粒子を気中で混合させて調製した複合触媒粒子を検討し、酸化チタンと銀の複合粒子の可視光照射下における優れた光触媒性能が認められた。酸化チタンと酸化銅の複合粒子では、酸化銅の割合を増大させたときの触媒性能が求められた。 2.銀のコロイド粒子を噴霧乾燥してCVD作製したチタニアナノ粒子と合体させて複合触媒粒子を作製し、複合化による触媒性能の向上を認めた。 3.噴霧乾燥した多層カーボンナノチューブ(MWCNT)粒子に対し、チタン、亜鉛原子を含む蒸気または液滴を混合して反応を生じさせ、複合(MWCNT+酸化チタン、MWCNT+酸化亜鉛)粒子を作製して、形態、MWCNTへの付着の状態、結晶性などを評価した。これらの複合粒子に対して、光触媒性能を評価した。 4.触媒粒子に付与した物質の割合、照射光の種類、触媒反応の対象物質・pH・共存酸化剤などを変化させて得られた光触媒性能を整理した。また既製の代表的な触媒粒子の性能も評価し、本研究で作製した複合粒子との対照を行った。複合粒子の性能は、作製法、性状、反応条件に依存することが明らかとなったが、とくに付与物質の割合を適切に選ぶことで、既製粒子を凌ぐ優れた性能を発揮できることがわかった。
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