研究課題/領域番号 |
21K04751
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
熊切 泉 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (20618805)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 炭素膜 / 脱水 / セラミック |
研究実績の概要 |
分離膜の厚さが薄いほど分離対象物質の透過性は向上するが、膜の機械的強度は低下する。このため、ミクロ多孔質な分離膜は支持体上に形成することが多い。一方、支持体の孔径や表面構造はその上に形成する分離膜の性能に大きな影響を与える。これまで分子ふるい性を示す炭素膜の合成には、特殊で高価な非対称支持体を使用してきた。この非対称支持体は販売停止となり、新しい支持体が必要となった。2021年度は、支持体の選択肢を広げる目的で、水処理用として複数の会社から市販されているセラミック多孔管(対称膜、公称孔径1.3μm)への製膜を試みた。支持体の孔径が大きいため、炭素膜の前駆体を支持体表面に薄く均一に塗布することができなかった。そこで、セラミック管の表面処理法を検討し、簡易な処理を施すだけで、水選択性を示す炭素膜の支持体として使用できることを示した。 炭素膜は透過性が低いことが課題の1つである。膜の空隙率を上げれば、水の透過性が向上するかもしれない。本研究では、これまでにガス透過性の向上がみられた鉄イオン添加に加えて、多孔質な殻をもつ中空シリカ粒子を炭素膜中に分散することも試みた。炭素膜の前駆体溶液に鉄イオンや中空粒子を混合して炭素膜を製膜したところ、合成条件を調整することで大きな欠陥がなく水選択性を示す複合炭素膜が得られた。SEMやTEM-EDS観察から、鉄や中空フィラーが膜全体に分散している様子が見られた。また、多孔質な中空フィラーと炭素膜の間に大きな欠陥は見られず、接着が良いことが示唆された。N2吸着では、炭素と中空粒子の複合材料中に、中空粒子特有のメソ孔は見られなかった。この結果も、中空なフィラーと炭素膜の接着がよく、フィラーを炭素膜が完全に被覆していることを示している。鉄や中空粒子を内包する炭素膜を合成できたが、水の透過性は向上しなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
炭素膜に中空で殻が多孔質なフィラーを分散した複合炭素膜や鉄を含む炭素膜の合成を試み、分離性能を示す複合炭素膜を得た。一方で、透過性の向上は見られなかった。
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今後の研究の推進方策 |
中空粒子や鉄の分散量を変えた製膜や、水透過性に与える操作条件(温度や水蒸気圧)の影響を検討し、膜の微細構造や水蒸気透過機構を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ガス流量調整用に購入予定の調整器が、コロナ感染症などによる流通の遅れで納期が未定となったため、発注を2022年度に延期した。学会がオンラインとなったため、旅費を使用しなかった。性能評価に必要な資材を、納期なども含めて見直し、今年度に使用する予定である。
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