研究課題/領域番号 |
21K04757
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
植田 芳昭 摂南大学, 理工学部, 准教授 (00599342)
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研究分担者 |
井口 学 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 客員教授 (00043993)
加藤 健司 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (10177438)
脇本 辰郎 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (10254385)
中嶋 智也 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (80207787)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 鉄鋼精錬プロセス |
研究実績の概要 |
溶銑予備処理工程におけるインジェクション法では,不活性ガスと共に脱硫剤などの粒子群を吹き込む.そのような粒子は溶銑との濡れ性が悪いため,吹き込まれた粒子はガスと溶銑の界面を貫通して溶銑内に侵入する際,背後に気体を纏ってしまい,浴内での粒子の分散が阻害される.他方,微小気泡が生成・崩壊するとき,その温度は数千度にまで上昇し,微小気泡内部の圧力は非常に高圧になることから,化学反応は非常に促進されることが知られている.このように,溶銑に投入される濡れ性の悪い粒子群が纏う気泡の状態は,化学反応と密接な関係があるものの,溶銑は不透明であることから,浴内での粒子群の分散挙動を直接観察することによって評価することはできない.本研究では,鉄鋼プロセスにおいて反応容器内部で起こる急激な気液界面現象の状態を,直接視認すること無しに浴外から音響学的に診断するための方策について検討している.流体が水ではない場合,表面張力と音速の値が異なるため,音響パターンは水モデル実験で得られた結果と異なる可能性がある.本研究では,水モデル実験で得られた知見を実際の鉄鋼プロセスに展開するための基礎研究として,放射音の発生機構が流体の性質によらず本質的に統一して扱うことが出来るか否か調査することを主眼としている. 今年度は流体の温度が放射音に及ぼす影響について検討した.液体の温度が変化することによって,液体の密度,動粘性係数,表面張力,音速といった流体の物性値のみならず,液体近傍の空気の比熱,熱伝導率,温度拡散率といった熱的物性値の値も変化する.今年度,検討の対象とした「水没球が発する放射音」においては,その音響特性に対して,熱的性質よりも流体的性質の方が大きいことを明らかにした. 加えて,気液界面現象を計算する手法として,渦粒子法にペナルティ法の概念を適用したものを検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,鉄鋼プロセスにおいて,反応容器内部で起こる急激な気液界面現象の状態を,直接視認すること無しに浴外から音響学的に診断するための方策について検討している.今年度の実験では,水没球が発する放射音に対して,流体の温度が放射音に及ぼす影響について検討した.その結果,音響特性に対して,熱的性質よりも流体的性質の方が大きいことを明らかにした.次年度では,液体の密度が及ぼす影響についても検討する予定である. 他方,数値シミュレーションに関する研究では,気液界面現象を計算するための,渦粒子法にペナルティ法の概念を適用した手法について,その境界条件の取り扱いについて検討し知見を得た.この結果は,急激な変形を伴う気液界面現象を数値的に扱う上で有用であると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,液体密度の影響について検討する予定である.実験の初期段階では,塩水で液体の比重を調整し音響特性に関する物理的知見を得る予定であるが,最終的には実際の溶鋼を見据えて,液体金属での実験までこぎつけることを目指している.これらの結果は,鉄鋼プロセスにおいて反応容器内部で起こる急激な気液界面現象の状態を,直接視認すること無しに浴外から音響学的に診断するため基礎的知見になり得ると考えている. なお,今年度得られた知見は,次年度,追加実験によるデータと併せて、発表予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では1本の水中マイクで実験を行っているが、もう1本を追加したいと考えている。 水中マイクとアンプの合計金額を勘案すると、今年度分予算は次年度に全額繰り越し、次年度予算との合算にて、それらを購入したいと考えている。
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