研究実績の概要 |
前年度までに確立した表面修飾技法を用い、多量元素の代表としてMgO NP、微量元素の代表としてZnO NPに対して溶出速度を制御したコーティングナノ粒子(C-MgO NP, C-ZnO NP)を調製し、クラミドモナスへの投与試験を行った。 培地中のMgをC-MgO NPに置き換えて投与した場合、置き換えなかった場合やMgO NPで投与した場合より、細胞数の増加が見られた。ナノ粒子の溶解性と細胞成長量の相関を調べたところ、ナノ粒子からのMg溶出速度は細胞増殖速度と相関を持たなかったが、溶出したMg濃度が低下するほど細胞増殖量が向上することがわかった。一方、ZnO NPによる投与を行った場合、同様にC-ZnO NPで投与した場合に細胞数の増加が見られたが、溶出したZn濃度は細胞増殖量と相関を持たず、Zn源からの溶出速度の低下にともない、細胞増殖速度が向上することがわかった。以上のように、ナノ粒子の溶解性を解析することで、Mgのような多量元素と、Znのような微量元素では、細胞増殖に有益な効果を与えるためのストラテジーが異なることを見出すことができた。 また、上記の実験と並行して、コマツナを対象として、土壌栽培におけるZnO NP投与試験を行ったところ、投与量5 mg/Lでは、Znの過剰な蓄積を起こすことなく乾燥重量とSPAD値が増加したが、それ以上の投与量ではZnの過剰吸収が起こり、50 mg/Lでは対照と同程度まで乾燥重量が減少した。以上の結果から、ナノ粒子から溶出したZnイオンが土壌のイオン交換能を介して植物に吸収されることで、土壌においても施肥効果を示すことを見出した。 研究期間を通して、ナノ粒子を投与した際の植物細胞の成長促進について、ナノ粒子の溶解挙動から理解するとともに、表面修飾により溶解性を制御することで、細胞成長に有利となるナノ粒子造粒法を確立することができた。
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