研究課題/領域番号 |
21K04760
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
山脇 浩 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (10358294)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 高圧力 / 液体粘性 / 水晶振動子 |
研究実績の概要 |
液体の粘性や密度は重要な基礎物性データであり、簡便で迅速な測定手法が求められている。本課題では、水晶振動子センサーにより高圧力下での粘度と密度を求める手法を開発し、バイオディーゼル燃料の主成分である脂肪酸メチルエステル類等に適用して、高圧下での物性(粘度、密度など)を評価することを目的とする。近年のディーゼルエンジンは高圧力( 200-300 MPa)下に燃料を一旦蓄えて噴射するので、バイオディーゼル燃料の高圧力下での挙動や物性の評価が重要である。水晶振動子を用いた方法では、少量サンプルで粘度と密度の圧力依存性を同時計測できるようになることが期待される。 粘性の圧力依存性測定法としての水晶振動子法は、共振応答の変化が、粘度・密度の積の平方根に相関することを利用したものである。今年度は、この手法を、密度標準液として使われることもあるブロモベンゼンに適用した。ブロモベンゼンに関しては、高圧力下での密度が30MPaまで報告されていたので、その値を外挿して使用した。こうして、ブロモベンゼンの粘度について、400MPaまでの圧力依存性を求めた。 一方で、この手法では粘度や密度を単独で求められず、高圧力下での粘度単独の値を得るには、高圧力下での密度を求める必要がある。このため、粘度と密度を分離して求める手法を探索した。常圧下では表面に液体をトラップするための加工を施した水晶振動子を用いて、コンダクタンスピークの半値周波数から密度測定を行う方法が報告されており、この手法をまずは試みたが脂肪酸メチルエステル類には適用が困難であることが判明し、別の手法を探索している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共振ピーク幅から、密度・粘度の積を求める方法で、ブロモベンゼンに対しても粘度の圧力依存性を測定することができた。293, 313, 333 Kの各温度で400MPaまでの粘度の圧力依存性を求めた。 過去の文献で、水晶振動子表面に液体をトラップする凸凹を付け、ここにトラップされた液体が振動子の振動に追随して動き、付加質量として働くことが知られている。したがって、水晶振動子による質量測定(QCM法)と同様にその質量を測定できる。この液体密度計測のための水晶振動子の表面加工については、当初、パターンをフォトレジスト後にメッキにより溝形成することを試みたが、溝の深さの再現性に問題があったため、スパッタリングにより金属の溝を形成する方法に切り替えた。これにより溝の深さの再現性の問題はクリアできた。 溝にトラップした液体の質量を求める方法として、過去の文献では、コンダクタンスピークの半値周波数から求めていた。しかし、この方法については、今回扱った脂肪酸エステル系では常圧においてすら文献とは異なる挙動を示し、密度計測に適用できないことが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
コンダクタンスピークの半値周波数から密度計測する方法が適用できないことが判明したので、別手法として 表面加工有り・無しの2つの水晶振動子を同一圧力下で測定して、その差を利用して求める手法を試みることにした。具体的には、発進回路を形成し、周波数カウンタでそれぞれの水晶振動子の共振周波数の差を求める。そのための回路や計測機器の準備して、予備測定を始めている。まずは、常圧下での液体密度測定を水晶振動子を用いた方法で実現する。 本課題では、 水晶振動子は市販の金電極付きのものを使用し、レジスト剤を用いて溝状(Line & Space)のパターンを露光・現像した後、スパッタなどで水晶振動子上に溝(数 μm幅のLine & Space)を加工しているが、高圧下での密度測定に適用するために、加工時の様々な条件や使用する材料ついて検討するとともに作業 手順の最適化や治具等の改良を行う。 その後、溝加工した振動子をピストンシリンダー型圧力セルに組み入れ、参照液体の高圧密度測定を行う。圧力セル内で信号を計測できるかどうかの テストや、加減圧を繰り返したときの再現性を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算執行の端数として少額(1万円未満)の未使用額が生じた。このため、次年度の消耗品等の購入へ充てることにしたい。
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