今まで、水晶振動子の共振応答の変化が粘度・密度の積に相関することを利用し、液体粘性を高圧力下で測定する手法の開発に取り組み、ブロモベンゼンなどでピストンシリンダー型圧力装置を用いて、400 MPaまで圧力範囲で水晶振動子の共振応答を測定し、粘度の圧力依存性を求めてきた。しかし、水晶振動子の基本音共振ピークからは、粘度と密度の積として値が得られ、粘度や密度を単独で求めることはできず、密度は文献値の外挿した値などを使用してきた。このため、粘度と密度を分離して求める手法を探索し、昨年度 ピストンシリンダー高圧発生装置のピストンの進みから体積変化を求める簡易容積可変法を適用して、液体密度の圧力依存性を測定する方法を考案した。今年度、この手法をオレイン酸に適用し、簡易容積可変法から密度、水晶振動子法から粘度・密度の積を測定し、オレイン酸液相の粘度と密度の圧力依存性を求めた。さらに、TiO2コーティングされた水晶振動子の応答が密度と相関しているということを利用し、TiO2コート水晶振動子による高圧下での液体密度の圧力依存性測定を試みた。水晶振動子上に約6μmのTiO2層を形成すると、共振周波数シフトに対して、粘度・密度の積に依存する項とρ依存項の両方の寄与が現れた。参照液体を利用して、それぞれの項を分離して関係式を導出できた。TiO2コート水晶振動子とコート無しの水晶振動子の2つを用いて密度変化を求める手順を考案し、ラウリン酸エチルに対して行うことにより、313 K および 333 K で最大 300 MPaまでラウリン酸エチルの密度依存性を求めることができた。
|