研究課題/領域番号 |
21K04767
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
田巻 孝敬 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (80567438)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | バイオ燃料電池 / メディエータ / 酵素 / デバイス設計 / エネルギー・物質変換 / ポリエチレンイミン / フェロセン / アントラセン二量体 |
研究実績の概要 |
触媒として酵素を用いるバイオ燃料電池は、グルコースなどの生体に安全・安心な燃料が利用できるため、医療用補助具や携帯機器のポータブル電源として開発が期待されている。本研究では、バイオ燃料電池の電極材料として用いるカーボンと酵素との界面構造を制御することで、酵素が有する高い反応速度を活用してバイオ燃料電池の高電流密度化を図る。 昨年度までの研究により、酵素および電極の間で電子授受を行っているメディエータ濃度(有効メディエータ濃度)の増加が電流密度の増加に有効であることが示され、酵素との高い反応性を有するポリエチレンイミン(PEI)骨格のレドックスポリマーとアントラセン二量体の複合化により高い触媒電流が得られることが示された。今年度は、固定化メディエータの安定性について検討を行った。PEI骨格へスペーサーを介さずにフェロセンを直接固定化した場合、電解液として用いる緩衝液の種類によって電位サイクルによりフェロセン由来の酸化還元ピーク面積、および酵素との反応による触媒電流が減少した。これは、緩衝液中のアニオンを介したPEIとフェロセンカチオンの錯形成に由来する電気化学的失活によるものと考えられた。そこで、アルキルスペーサーを介してフェロセンの固定化を行った。スペーサーを介した固定により触媒電流値自体はわずかに減少したものの、電位サイクルに対する触媒電流の保持率が増加し、高電流密度と高い安定性を両立するメディエータ固定化法を明らかにした。今後は、さらなる電流密度と安定性の向上へ向けて、被覆密度やポリマー構造等の界面構造制御を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は想定していなかったが、ポリエチレンイミン骨格へフェロセンを固定化したレドックスポリマーはアントラセン二量体との複合化により高密度に電極上へ被覆した場合に、緩衝液中のアニオンとの錯形成により電気化学的に不活性化することが明らかとなった。そこで、スペーサーを介した固定化を行ったところ、高い安定性が得られ、高電流密度と高い安定性を両立するメディエータ固定化法が明らかとなったことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は電極設計指針の確立へ向けて、本年度開発したスペーサーを介してメディエータをポリエチレンイミン骨格へ固定化したレドックスポリマーとアントラセン二量体の複合体を用いて、さらなる界面構造制御を進める。
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