研究課題/領域番号 |
21K04770
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
西山 覚 神戸大学, 工学研究科, 教授 (00156126)
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研究分担者 |
市橋 祐一 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (20362759)
谷屋 啓太 神戸大学, 工学研究科, 助教 (30632822) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マイクロ流動層 / 光触媒 / 連続反応器 / カーボンリサイクル / 光応答型トレーサー粒子 / 粒子流動状態 / 受光量最大化 |
研究実績の概要 |
令和3年度のマイクロ流動層の形状検討の結果,マイクロ流動層反応器の入口付近に淀み領域が生成し一部の粒子が有効に活用されない問題点があった.これは入口の流路拡大による流れのポテンシャルコア生成によるものであった.この問題については,最終的に流動部分の前に並行流生成の区間を設けることで改善された.流動実験で確認するとともに,流れ解析ソフトを用いて流動状態を検討したところ流動部分の前に30 mmの助走区間を設けることでほぼ並行流が得られ,ポテンシャルコアが解消されることも確認できた.流量の増加に伴い,固定床の領域I,粒子層の膨張が始まり粒子が微小領域でのみ運動する領域II,および激しくマイクロ流動層反応器内の広領域で運動する領域IIIに分けられる. 光が流動層反応器内のすべての領域に浸透するためには厚みは薄い方が望ましいが,流動領域のギャップが狭くなると壁面と流動粒子の摩擦による影響が大きくなると予測される.厚みが薄くなるに従って最小流動加速度が大きくなることがわかった. 3 mmの厚さを有する反応器では最も大きな最小流動化速度16.2 mm/sとなった.3 mm厚さの反応器を用いて光応答型トレーサーを用いた粒子の受光量測定実験を実施した.その結果,流動領域IIIとなる運転条件で安定した受光量(トレーサー粒子の変色速度定数)k1=1.5×10-3 s-1が得られた.昨年度の報告書にも記載したが,粒子の流動が不十分であると流動層壁面での粒子の変色が早く見かけ上k1の値が大きく求められる(内側の粒子は変色していないため).線速度を増加させて安定なk1が得られる条件がそのマイクロ流動層反応器の真の粒子1個当りの単位時間あたりの受光量となる.以上の実験結果からマイクロ流動層を用いた光および光触媒反応を効率的に行うためには流動状態IIIの領域で行うことが必要であることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度において明らかとなったポテンシャルコア生成による未混合領域の問題については,マイクロ流動層の幅や入口付近のテーパー形状についての検討も行ったが,最終的に流動部分の前に並行流生成の区間を設けることで改善されることがわかった.流動実験で確認するとともに,流れ解析ソフトを用いて流動状態を検討したところ流動部分の前に30 mmの助走区間を設けることでほぼ並行流が得られ,ポテンシャルコアが解消されることも確認できた.流動状態を詳細に観察したところ,流量の増加に伴い,最終流動加速度以前の固定床の領域I,粒子層の膨張が始まりそれぞれの粒子が微小領域で運動する領域II,および更に層の膨張が進行し激しくマイクロ流動層反応器内の広領域で運動する領域IIIに分けられることがわかった.光応答性トレーサー粒子を用いた受光量測定実験から,粒子が広領域で流動する領域IIIですべてのトレーサー粒子に光が均一に照射されることを明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
光および光触媒反応においては粒子が全く流動しない領域Iや流動領域が微小空間に限定される領域IIは好ましく無いと思われる.この形状のマイクロ流動層を用いて,光応答型トレーサー粒子による光照射実験を実施した結果,安定した流動状態(領域III)で光応答結果が得られた.令和4年度の検討により光および光触媒反応に用いる適切なマイクロ流動層反応器の形状因子が求められた.令和5年度については,実際にいくつかの光触媒反応に応用し有効性を確認するとともに,最終的に光改質反応への応用を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度に実施できなかった学会報告等での旅費や消耗品の購入に使用する予定である.
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