研究課題/領域番号 |
21K04772
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
岩井 利之 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 主任研究員 (20416291)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | フロー合成 / フラーレン / PCBM / 精製 / メタノフラーレン |
研究実績の概要 |
本研究課題では、精製方法まで含めた一貫プロセスとしてフラーレン誘導体PCBMのフロー合成方法を設計し直す。加えてフロー系でのPCBM精製方法の検討を行い、合成から精製までの連続フロー化手法の確立を目指すものである。 初年度はPCBMのエステル部分に高極性官能基を導入することでアルコール可溶性フラーレン誘導体とし、フラーレンとの分離精製を容易にすることを計画した。PEG系の置換基を導入した誘導体の合成を試みたが、ヒドラゾン前駆体の合成・精製のところで良好な結果が得られなかったこと、また、合成できたフラーレン誘導体がアルコールに不溶であったことから、導入する置換基を検討する必要が生じた。次に没食子酸から変換した置換基の導入を試みたところ、ヒドラゾン前駆体の合成・精製は良好に進行し、高極性フラーレン誘導体を合成することができた。この高極性フラーレン誘導体は別合成法による既知化合物ではあったが、水-アルコール系に溶解することが報告されていることから、これらの化合物を起点に、本課題に適した誘導体をさらに探索することとした。また、これまでに合成した高極性フラーレン誘導体に関しては、カラム精製により単離後、PCBMに変換できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度はアルコール可溶性フラーレン誘導体の探索とその精製方法の検討を行ってきた。本研究ではフラーレン誘導体の合成方法として、ヒドラゾン法と硫黄イリド法の2つを検討する予定であったが、ヒドラゾン法による誘導体合成に留まっている。また、アルコール可溶性フラーレン誘導体の探索の起点となる誘導体合成には成功しているものの、その探索が十分とは言えず、フロー合成への展開までは進展できていない。次年度以降に検討予定であった高極性フラーレン誘導体のPCBMへの変換を確認できたことなど、本課題における有益な結果は得られているものの、全体的に進捗としてはやや遅れていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
アルコール可溶性フラーレン誘導体の探索の起点となる誘導体合成が行えたことから、次年度以降は硫黄イリド法による合成法の確立などの誘導体合成を進展させる。加えて、合成から精製までの連続フロー化に適した誘導体の探索、フロー系での精製法の検討などを行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では膜分離法によるフロー合成用液-液セパレータの購入を計画していたが、機器の調査を進めていく中で、フロー系で液-液分離を行うことのできるミキサーセトラがあることが分かった。実機を見ることのできる展示会などが開催されない/参加できない状況下で情報収集が遅れていたこともあり、いずれの方式の機器が研究課題に適しているか判断しきれず、購入機器を決定することができなかった。 輸入品である液-液セパレータの価格変動によるコスト上昇や納期の問題も考えられるが、次年度にはいずれの機器がより適したものであるか判断して購入する予定である。
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