研究課題/領域番号 |
21K04774
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
田邊 真 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (80376962)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ハイブリッド触媒 / 銅 / デンドリマー / ナノ粒子 / 酸化変換 |
研究実績の概要 |
本課題は,卑金属,貴金属,典型金属の元素特性を活かした三元素ハイブリッド触媒を創製し,その局所構造および酸化能の基礎的な研究成果を基盤として高効率酸化変換を目指すことである. 化学的性質が顕著に異なる3種の合金粒子は,その組成比に応じて電子状態及び動的構造が容易に変動するため,特定の組成比をもつハイブリッド触媒は飛躍的に触媒活性が向上することが期待される.ハイブリッド粒子の合成には,フェニルアゾメチンデンドリマーを鋳型として元素組成および粒子サイズが精密に制御することを目的とした.これまでの研究成果を基にして,酸化還元活性な元素の「銅」,有機基質の配位能が高い電子豊富な「白金」,安定な酸化物を形成する酸素親和性が高い「スズ,ビスマス」の二元素,三元素合金粒子の合成を検討した. デンドリマーに対する各元素の金属塩が配位する錯形成挙動をUVスぺクトルから観察した.今年度は,銅-ビスマスの二元素で構成される複合酸化物サブナノ粒子を精密に合成した.関連する銅,ビスマスの単一元素のサブナノ酸化物触媒を用いて,酸素分子を酸化剤とするスチレンの液相酸化反応を検討した.その結果,反応生成物として有用な過酸化物を高選択的に生成する酸化反応が進行したことを見出した.特に,酸素親和性が高いビスマスを導入した二元素触媒では,シリカ担体とより強く吸着した触媒を合成することで耐久性が向上することを明らかにした.今年度では二元素ハイブリッド触媒の研究成果をまとめて,論文発表に至ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度には,フェニルアゾメチンデンドリマーを鋳型として,銅を主元素とする貴金属(白金)と典型元素(スズ)で構成された三元素ハイブリッド触媒を合成した.デンドリマー骨格内のイミン窒素に対して,ルイス酸性を示す金属塩を加えると,ルイス酸性が高い金属イオンが中心部位から周囲に向けて段階的に集積することを確認した.還元剤で処理すると,デンドリマーで包摂された二元素ハイブリッド触媒(Bi12Cu16),三元素触媒 (Pt4Sn8Cu16)を合成した.反応性に富むサブナノ粒子は容易に凝集を引き起こすため,シリカに担持して不均一系触媒を調整した. 合成した三元素ハイブリッド触媒は,走査透過型電子顕微鏡観察(STEM),エネルギー分散型X線分光(EDX),放射光施設によるX線吸収微細構造解析により,1nm程度のハイブリッド粒子の形成を確認した.また,放射光施設のX線吸収微細構造解析から酸素親和性の高いスズ,銅が酸化された複合酸化物サブナノ粒子が形成することが分かった.サブナノサイズの複合酸化物粒子は,酸素原子を放出する酸化力の向上が期待されるため,良好な酸化触媒として活性を示すことが期待される.実際に,Bi12Cu16触媒では,それぞれの単一元素触媒と比較して,触媒活性および耐久性が向上したことを明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
初年度では,フェニルアゾメチンデンドリマ―への3種の元素を集積させて,ハイブリッド粒子の合成に成功した.今後の研究推進として,炭化水素のC-H結合を酸化変換する触媒機能を系統的に評価する.特に,酸素分子の活性化と脱離反応がより温和な条件下で進行する触媒に着目する.触媒活性の検討には,粒子サイズが大きいナノ粒子や単一元素および二元素で構成された粒子の触媒活性を網羅的に検討するだけでなく,三元素ハイブリッド粒子の電子状態や欠陥構造の存在などの構造解析から特異な電子状態を精査することで,触媒活性が向上する要因を明らかにしていく.このアプローチにより,元素選別や元素組成を戦略的に検討することで,研究計画に沿った内容を実行すること目指していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
その理由は,2021年度に研究代表者の所属変更があったこと,独立基盤形成支援(試行)を受けたが大きな要因である.追加採択された独立基盤形成支援(試行)による予算を用いて研究室の立上げを従事した.研究代表者の新しい所属でも,ほぼ準備が整ったため,実質的な研究室を運営するため,今年度の予算を順次執行していく.
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