研究課題
安価で酸化還元活性な「銅(卑金属)」を軸として「貴金属」と「典型金属」で構成される銅を基軸とした多元素サブナノ粒子を用いて、還元反応に適した触媒開発を検討した。従来、貴金属である白金やパラジウムなどの単一元素触媒は水素分子のホモリシス開裂を通じてオレフィンへの水素化が優位となることが知られている。これに対して、多元素触媒は各元素の電気陰性度が異なるため、「ヘテロリシス開裂の活性化機構」が優先し、極性ニトロ基-NO2に水素原子を効率的かつ選択的に付加させることが期待できる。このようにして、多元素サブナノ粒子を構成する各元素の特性を活かして、温和な条件下で高効率・高選択率を実現する還元触媒の開発を目的とした。還元反応における触媒性能を評価するために、過剰量の還元試薬存在下で4-ニトロフェノール (4-NP) を4-アミノフェノール (4-AP) に触媒的に還元するモデル反応を採用した。脱気した水を溶媒として紫外可視分光光度計を用いて、4-NPが減衰する還元反応の追跡実験をおこなった。4-NPに対して0.02 mol%のPt4Sn8Cu16/SiO2 触媒を加えてニトロ基の還元反応を検討すると、2分以内に4-NPアニオン化合物 (還元剤の塩基作用により4-NPのフェノール性プロトンが脱離する) に相当する吸収ピークの減少 (400 nm) と4-NPの吸収ピークの増大 (300 nm) が観測された。同様な反応条件でPt12Sn16/SiO2触媒とSn28/SiO2触媒を用いた還元反応は、4-NPのピーク減少までに約50分、約320分を必要とし、これらの反応速度定数を比較した。また、最高活性を示した三元素Pt4Sn8Cu16/SiO2触媒を用いて、繰り返し利用を検討した。基質原料の4-NPを再添加してもほぼ同じ短時間で原料が95%以上の転化率で消費し、5回までの繰り返し利用が確認された。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件)
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