研究課題/領域番号 |
21K04778
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
竹内 雅人 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (90382233)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 固体塩基触媒 / 酸化マグネシウム / 酸化カルシウム / 熱分解 / アンモニア / 二酸化炭素 / イソシアン酸 |
研究実績の概要 |
本申請研究では、地球温暖化の原因物質の一つとされる二酸化炭素の削減を目的として、固体塩基触媒を用いてNH3によるCO2の固定化反応を検討している。2021年度の研究では,酸化マグネシウム(MgO)に300℃以上でCO2とNH3を作用させると,主としてイソシアン酸(H-N=C=O)が生成することを見出した。この結果を受け、2022年度は、MgOよりも塩基性の高い酸化カルシウム(CaO)を用い、同反応におよぼす触媒表面の塩基強度との関連性について検討した。 市販のCa(OH)2を錠剤成型し,加熱およびガス流通が可能な拡散反射測定ユニットにセットした。前処理としてCa(OH)2を600 ℃で加熱することでCaOを得た。次に,触媒温度を300~600℃に設定し,まずCO2を流通させた(30 cc/min)。次に,同温度のままNH3(1 %,Ar希釈)流通に切り替えた(2cc/min)。各気体の流通過程において,FT-IRスペクトルを拡散反射法にて測定した。 Ca(OH)2の熱分解により調製したCaOを反応温度にまで下げる際、500℃以下になると空気中のCO2を吸着しCaO表面に少量であるがCaCO3の生成が確認された。ここにCO2を流通させるとCaCO3の吸収が増加した。この後、NH3流通に切り替えても500℃以下ではN=C=O結合に基づく吸収(2193 cm-1付近)はほとんど観測されなかった。しかし、CaCO3の熱分解が進行する600℃以上でCO2、次いでNH3を流通させるとわずかであるがイソシアン酸のN=C=O結合に基づく吸収が観測された。 これらの結果から、MgOよりも塩基性の高いCaOを触媒に用いると、CO2吸着により安定なCaCO3が生じ、この炭酸塩の熱分解が進行する600℃以上でNH3を作用させないとCO2の還元反応が進行しないことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度にFT-IR分光光度計を導入し,あらかじめ所有していたガス流通および昇温時の測定が可能な拡散反射ユニットと組み合わせることで,触媒の前処理から所定の温度においてガスを流通させながら触媒表面の吸着種や反応生成物のFT-IRスペクトルを測定できる態勢を整えることができた。2年目にあたる2022年度は、Mg(OH)2およびCa(OH)2の脱水過程だけでなく水和過程、NH3によるCO2の固定化反応を種々の条件で行った。これにより、同反応には塩基強度の高いCaOよりも適度な塩基強度を有するMgOが優れていることを明らかにした。 以上のように,測定装置の導入,測定条件の最適化,当初期待された結果の取得と,概ね順調に研究が進行しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2021~2022年度の研究において,固体塩基触媒であるMgOおよびCaOを用いてNH3によるCO2固定化反応を検討した。前者では300~400℃で反応が進行したのに対し、後者ではCO2吸着で生じたCaCO3の熱分解が進行する600℃付近まで加熱しないとNH3と反応しないことを明らかにした。このように、同反応には触媒表面の適度な塩基強度が必要であることから、2023年度は、酸化ジルコニア(ZrO2)を用いた検討を行う。ZrO2触媒は、酸と塩基の両機能性を有することが知られており、NH3およびCO2に対し優れた吸着特性を示すことが期待される。しかし、同反応は固体酸であるH+型ゼオライトでは全く進行しないことがわかっており、酸塩基両機能性を有するZrO2触媒を用いた測定結果には興味が持たれる。これらの測定結果を蓄積することで,同反応におよぼす塩基や酸強度の影響等を検討する。そしてこれらの知見を総合的に考察することで、NH3によるCO2固定化反応に最適な触媒を探索していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初参加を予定していた海外での国際学会にスケジュールの都合で出席できず、国内で開催された国際会議に出席した。このため、交通費の支出が抑えられた。これを受け、一部生じた使用残額については,次年度の消耗品費として使用する予定である。
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