本研究ではV2O5を主成分とする導電性バナジン酸塩ガラス(例えば20BaO・10Fe2O3・70V2O5)をベースに、貴金属や希少金属を必要としない空気極触媒材料を開発する。ガラスの特徴として骨格中に不純物を均一に配置できること、そして導電性バナジン酸塩ガラスの特徴として適切なアニーリングにより電気伝導性などの物性を任意に制御できることなどが挙げられる。この特徴を活かし、空気極触媒に適した構造を創生する。 前年度より引き続きCo3O4を5 mol%添加に固定し、主成分であるV2O5とBaOの組成比を変えたガラスを溶融急冷法により合成した(xBaO・5Co3O4・5Fe2O3・(90-x)V2O5 [x = 25~10])。さらにアニーリングによる構造や電気伝導性、および空気極触媒性能への影響について検討した。アニーリング温度は450 ℃とし、アニーリングした試料は微結晶相が析出したガラスセラミックス(結晶化ガラス)となった。本研究で開発したガラス材料およびガラスセラミックス材料はいずれも酸素還元反応(放電)および酸素発生反応(充電)を促進する二機能性触媒として使用できることが実証された。ただし組成およびアニーリング時間によりその性能は変化し、特に組成の影響が大きいことが分かった。一般に酸化物ガラスではガラス骨格を形成する網目形成成分(network former; NWF)と、その隙間に存在する網目修飾成分(network modifier; NWM)が存在する。バナジン酸塩ガラスにおいてV2O5はNWF、BaOはNWMの役割を果たす。触媒活性点が遷移元素とするならば、NWM(BaO)/NWF(V2O5)比が変化することで、触媒活性点数とガラス構造の二つが変化することを意味する。その結果、ガラス組成が空気極触媒性能に強く影響を及ぼすこととなったと考えられる。
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