研究課題/領域番号 |
21K04784
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
前田 義昌 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (30711155)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 微細藻類 / オメガ3脂肪酸 / 人工染色体 / 自律複製配列 / 代謝改変 |
研究実績の概要 |
本研究では、微細藻類の多数の遺伝子を一括導入し、大規模な代謝改変を可能とする人工染色体を開発する。人工染色体を用いて、養殖魚の成育に必須な飼料添加物であるオメガ3脂肪酸の生合成に関与する遺伝子を微細藻類に導入し、得られた改変微細藻類により効率的にオメガ3脂肪酸を生産するプロセスを開発することを目的とする。2021年度は、これまでにナノポアシークエンサーを用いて獲得した、微細藻類の染色体レベルでアセンブリされたゲノム情報から、GC含量の特徴を基にセントロメア配列を推定した。推定した微細藻類セントロメア配列、もしくは他の生物に由来するセントロメア/自律複製配列を、薬剤耐性遺伝子を含むベクターにそれぞれ挿入した。構築したベクターを微細藻類細胞に導入し、薬剤選択培地中での生育を指標に、導入ベクターが人工染色体として細胞内で複製・分配されているか機能評価した。ベクターの導入には、大腸菌をドナー細胞として用いる接合伝達法を採用した。その結果、複数のベクターにおいて薬剤選択培地中で生育を示す形質転換クローンを獲得することに成功した。形質転換クローンに含まれるDNAをテンプレートとして用い、導入ベクターに特異的な配列を標的とするプライマーによるPCRを実施したところ、特異的なバンドを得ることができた。このことから、微細藻類細胞に導入したベクターが安定的に保持されていることが示され、導入ベクターが人工染色体として機能している可能性が示唆された。また、微細藻類の化学処理により、オメガ3脂肪酸の生産を増加する方法を新たに発見し、その作用機序を考察した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微細藻類の染色体レベルでのゲノムアッセンブリにより、セントロメア配列を予測できた。これにより、当初の計画通り、セントロメア配列を含むベクターが人工染色体として機能可能か評価することができた。このことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度は推定セントロメア配列の内、微細藻類細胞内で維持される人工染色体を構築できた配列を比較し、GC含量・配列長の特徴や、共通の配列モチーフを探索する。また、研究対象とする微細藻類(珪藻)の種を増やし、人工染色体の設計指針の汎用性を評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
人工染色体ベクターの構築の一部を外注する予定であったが、予定よりも効率的にベクター構築が進んだため、外注する必要がなかった。また、研究代表者の研究機関の異動に際し、2022年度以降に、研究対象とする微細藻類(珪藻)の種類を増やし、より汎用性と科学的インパクトの高い研究を追加実施する方針を立てた。そのため、2021年度に、複数の微細藻類に適用可能なベクターデザインを行い、そのデザインに従って、一部のベクター構築を2022年度に行うこととしたため、次年度使用額が生じた。使用計画として、次年度使用額をベクター構築のための物品の購入や、ベクター構築外注サービスのために使用する予定である。
|