研究課題/領域番号 |
21K04785
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
黒澤 尋 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (10225295)
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研究分担者 |
川上 隆史 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (60638881)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | bFGF代替物 / ヒトiPS細胞 / 熱安定性 / 環状ペプチド / 未分化性維持 / 二量体化 |
研究実績の概要 |
塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)は、ヒトiPS細胞の多能性維持と増殖促進のために必須のタンパク質性因子である。すでに、bFGF受容体(FGFR1c)に特異的に結合し、bFGF様活性を示す複数の新規な環状ペプチドbFGF代替物(cpep-bFGF)の取得に成功している。しかし、bFGF代替物であるcpep-bFGFのbFGF様活性は、汎用されているリコンビナントタンパク質型のbFGF(repro-bFGF)に大きく劣後することが課題となっている。ヒトiPS細胞におけるbFGFの作用機序は以下のように考えられている。すなわち、bFGFは細胞表面のヘパラン硫酸プロテオグリカンを介してbFGF受容体(FGFR)に結合し、bFGFの二量体化及びリン酸化によるFGFR下流のシグナル伝達を引き起こし、細胞の未分化維持・増殖をサポートする。また、bFGFは複数の受容体(FGFR1c, FGFR2c, FGFR3c, FGFR4)を活性化する。よって、2021年度は(1)bFGF受容体(FGFR2c)の結合するcpep-bFGFの調製、(2)bFGF代替物cpep-bFGFの二量体化条件、特にリンカー長の最適化について検討を行った。 (1)FGFR2cに特異的結合する数種類のFGFR2c結合型cpep-bFGFを調整することに成功した。 (2)FGFR1c結合型及びFGFR2c結合型cpep-bFGFについて、二量体化における最適なリンカー長を検討した。リンカーには、アミノヘキサン酸(Ahx)を用いた。cpep-bFGFの種類により、最適なリンカー長が異なることが明らかとなった。まだ、二量体化の最適条件を得るに至らなかったが、これまでのデータからは、FGFR1c結合型及びFGFR2c結合型cpep-bFGFともに、二量体化によりbFGF様活性が向上する傾向が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)bFGF受容体(FGFR2c)の結合するcpep-bFGFを新たに調製し、アミノ酸配列の最適化を行い、いくつかの有力なFGFR2c結合型bFGF代替物を得た。これについては、2021年度の到達目標を達成した。 (2)bFGF代替物cpep-bFGFの二量体化条件、特にリンカー長の最適化を試みた。cpep-bFGFは、二量体化によりbFGF様活性が向上する傾向が見られたが、リコンビナントタンパク質repro-bFGFの活性には及ばず、引き続き二量体化条件の検討が必要である。二量体化の条件検討は、当初から2022年度までの2カ年計画であることから、概ね計画通りに研究が進展していると思われる。 (1)(2)に関連して、bFGF代替物の有効性をヒトiPS細胞の培養系で検証しているが、細胞の未分化性及び増殖性に及ぼす効果が細胞レベルで確認されており、計画通りに評価試験が実施できている。
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今後の研究の推進方策 |
環状ペプチドbFGF代替物cpep-bFGFは、二量体化によりbFGF様活性が向上する傾向が見られたが、リコンビナントタンパク質repro-bFGFの活性には及ばず、引き続き二量体化の条件を検討するなど、活性の強化を行う必要がある。これまで通り、FGFR1c結合型cpep-bFGFのホモ二量体、及びFGFR2c結合型cpep-bFGFのホモ二量体においてリンカー長の最適化を進めるとともに、FGFR1c結合型とFGFR2c結合型を組み合わせたヘテロ二量体の構築し、その二量体条件についても検討する方針である。
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