抗体薬物複合体はスペーサとして高分子量のPEGを修飾した場合、薬物の疎水性は低下するが、疎水カラムでの分離においてPEGを認識した分離が行われることが前年度までに分かっている。今年度は抗体薬物複合体の分離担体としてリガンドの異なる疎水カラムを用い、その保持溶出挙動について検討した。薬物が電荷をもつpHでは、カラムへの保持がみられなかったが、スペーサーとして用いたPEGを薬物と結合させた場合、さらに抗体と結合させた場合のみ疎水カラムへの保持がみられた。保持の強さはリガンドの疎水性順になったが、薬物と化学構造の類似したリガンドでは、抗体薬物複合体間の分離度が向上する挙動がみられた。また、いずれのカラムにおいても、溶出塩濃度は移動相の塩濃度勾配と一定の相関関係を示し、移動相におけるタンパク質の溶解度のモデル式により保持を決定する分配係数を塩濃度の関数として記述できることが分かった。モデル式のパラメータのうち塩濃度の変化に対する感度を示すパラメータに大きな違いは見られず、移動相中の溶解度を示すパラメータがリガンドの種類によって大きく変化することが分かった。また、抗体タンパク質の表面に薬物を修飾した場合と、抗体の分子内部を修飾した場合では、表面に修飾した抗体薬物複合体の方が担体に強く保持される結果となった。
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