研究課題/領域番号 |
21K04795
|
研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
河原崎 泰昌 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 准教授 (80303585)
|
研究分担者 |
田中 瑞己 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70803344)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 難生産性組換え蛋白質 / 酵母異種蛋白質発現系 / 機能未知転写因子 / レアコドン / プロモーター / 組換え蛋白質分泌生産 / 遺伝子工学 / 遺伝子発現制御 |
研究実績の概要 |
発現による宿主細胞への毒性や、不十分な折りたたみにより活性型で発現することが困難である「難生産性組換え蛋白質」の効率的発現系を構築し、難生産性を引き起こす分子機構を解明し、これを事前に回避する方法を提案することが本研究の目的である。これまでの研究により、研究代表者らは「組換え酵母細胞を高密度に懸濁し、発現誘導を行う」という簡便な操作により、難生産性蛋白質の分泌生産量が飛躍的(菌体あたり千倍)に高まる現象を見出し、この「高密度発現系」の分子機構を基礎として研究を展開してきた。 高密度発現系において発現量が増大する宿主遺伝子を複数同定し、これらの遺伝子が高発現する(=難生産性蛋白質の発現が容易化すると期待できる)培養条件を調べた。これらの遺伝子のプロモーター領域を解析し、難生産性蛋白質を生産するための発現プロモーターとして利用可能であることを示した。これらの遺伝子のうち、Ygr067C遺伝子は機能未知の転写因子をコードしており、自身の発現を負に調節することがわかった。 他方、大腸菌および酵母を宿主とする発現系において翻訳共役型蛋白質フォールディングを改善すると期待される大腸菌および酵母のレアコドンについて解析を進め、レアコドンを設置する位置がフォールディング改善において重要であることを明らかにした。 バクテリオファージT7を用いて進化させた高フォールディング型蛋白質変異体が獲得したいくつかの有効変異を個別に解析した。ファージを用いた進化系では、翻訳共役型の新生ポリペプチド鎖の折りたたみと、おそらくモルテングロビュールまでの折りたたみが加速しているとの仮説を立てている。引き続き令和4年度で仮説を立証していきたい。 これらの研究成果を、令和3年度日本生物工学会大会において口頭発表し、論文化を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は、新型コロナウイルスの世界的な流行および国内の緊急事態宣言・蔓延等防止措置の影響により、海外からの試薬・オリゴDNAの到着が常に遅れ、実験日程の変更を余儀なくされた。また、学内感染者(および濃厚接触者)への対応等、不測の事態が連続した。 しかしながら、研究自体は概ね順調に推移し、未知転写因子Ygr067C遺伝子欠損株の網羅的遺伝子発現解析より、Ygr067Cにより発現制御されている遺伝子候補を推定することができた。定量的PCRにより遺伝子発現量の精密定量を実施した。酵母指数増殖期、diauxic shift、post diauxic shift、前期定常期における細胞あたり蛋白質合成速度を定量することができ、遅発性プロモーターを利用した培養後期における増殖非連動型の難生産性蛋白質の生産を効率的に行える条件を見出すことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き難生産性を引き起こす組換え蛋白質をレポーターとして発現毒性の回避条件を探す。発現プロモーターの最適化・スクリーニングを複数の難生産性蛋白質を用いて実施する。 Ygr067Cpにより発現制御されている遺伝子群を同定し、Ygr067C(出芽酵母に固有の遺伝子でもある)の役割、特に発酵醸造プロセスにおいて果たしている役割について解析を進める。 T7ファージを進化プラットフォームとする進化工学システムを改良し、活性を持たないORF短絡型変異体が選択されてこないよう、フォールディングレポーターの最適化を図る。
|