研究課題/領域番号 |
21K04798
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
吉田 亘 東京工科大学, 応用生物学部, 准教授 (10599806)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 等温PCR / 修飾塩基 / グアニン四重鎖構造 / i-motif構造 |
研究実績の概要 |
本研究では等温PCRを用いて標的領域の修飾塩基を簡便に測定する方法を開発することを目的としている。これまでにVEGFグアニン四重鎖(G4)構造と、その相補鎖で形成されるintercalated motif (i-motif)構造中のCpGのシトシンの5位がメチル化されると、これら構造の熱安定性が上昇することを明らかにした。さらに、これを等温PCR法であるRecombinase Polymerase Amplification(RPA)法で増幅すると、CpGメチル化レベル依存的にRPA効率が低下することを明らかにした。つまり、RPAの増幅効率を測定するだけで、標的領域のCpGメチル化レベルを測定できることを示している。本手法はCpGのメチル化レベルだけでなく、G4構造やi-motif構造の熱安定性に影響を与える他の修飾塩基の測定にも応用可能である。そこで、本年度は近年哺乳類ゲノムDNAにも含まれることが明らかになったN6メチルアデニン修飾が、G4構造とi-motif構造に与える影響を解析することを目的とした。本研究では、特殊な二量体化G4構造を形成するc-MYBとHER2 G4構造、テロメア末端で形成されるi-motif構造を標的とし、これらのアデニンの6位をメチル化したオリゴヌクレオチドを合成し、それらの熱安定性を円二色性スペクトル(CDスペクトル)法で解析した。その結果、c-MYB G4においてはA3とA18、A6とA21を、HER2 G4においては、A9とA21、A12とA24をメチル化するとその熱安定性が低下することが明らかになった。テロメアi-motifに関しては、A5、A6、A17、A18をメチル化するとその熱安定性が低下することが示された。これらの結果より、標的領域のN6メチルアデニンレベルもRPAの増幅効率を測定するだけで簡便に測定できることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では等温PCRを用いて標的遺伝子中の修飾塩基を簡便に測定する方法を開発することを目的としている。これまでに、CpGメチル化によりG4構造やi-motif構造が安定化するため、それらの領域のRPA効率はメチル化レベルに依存して低下することを明らかにした。つまり、RPA効率を測定するだけで、CpGメチル化レベルを測定できることを示した。さらに、CpGメチル化以外の修飾として、N6メチルアデニン修飾に着目し、N6メチルアデニン修飾によってc-MYB G4構造、HER2 G4構造、及びテロメアi-motif構造が不安定化することを明らかにしたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、CpGメチル化によってG4構造とi-motif構造が安定化するため、これらを鋳型とした場合、RPA効率が低下することを示した。さらに、N6メチルアデニン修飾によってG4構造とi-motif構造が不安定化することを明らかにした。今後は、RPAによってN6メチルアデニン修飾レベルを測定できるか検討する。さらに、メチル化CpGの脱メチル化反応過程において生じる5-ヒドロキシメチルシトシン、5-ホルミルシトシン、5-カルボキシシトシンなどがG4構造やi-motif構造の熱安定性に与える影響を明らかにし、等温PCRを行うだけで、それら修飾塩基を測定できる方法を開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
化学合成した修飾オリゴヌクレオチドが想定より安価に購入できたため、次年度使用額が生じた。なお、令和6年度の直接経費としては物品費521,600円、旅費90,000円、その他10,000円を予定している。
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