研究実績の概要 |
本年度は、金属クラスター表面で有機化学反応により表面特性を制御する手法を開発し、特にほぼ完全にカチオン化された金クラスター化合物の合成に成功した。まず、4-ピリジンエタンチオール(4-PyET)を用い金原子25個で構成される安定組成のクラスター化合物[Au25(4-PyET)18]-を合成し、クラスター表面のメンシュトキン反応(ピリジル基のメチル化)によりAu25クラスターが有する18分子の表面配位子のカチオン電荷数を段階的に制御した。メチル化試薬や反応時間の最適化により、異なる平均表面配位子組成のクラスターを自在に合成することが可能となった。 金クラスターのコア部位は分子的な特性を有するため様々な光反応への応用が可能だと期待されているが、チオラート(SR)保護クラスターの場合はその厚く密な表面配位子層により反応基質と有効に近接できないため一般に光反応活性が高くない。合成した塩基性クラスター表面に対して金属イオンの配位を行うことで(Co2+, Fe2+, Cu2+, Ni2+)、表面に光触媒反応活性を与えることに成功した。光吸収により電子励起状態に至った金属クラスターコアから表面金属カチオンへの電子移動反応を定常・時間分解蛍光測定により解析し、その配位状態を吸収スペクトル、XPS等により明らかとした。一方で、カチオン化したクラスター表面に対しアニオン性分子を配列した構造の作成にも同時に成功し、エレクトロスプレーイオン化質量分析でその存在を確認することができ、光反応活性を検討している。
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