代表者は近年、表面に塩基性・カチオン性置換基を有する原子精度で精密な金クラスター化合物の合成に世界で初めて成功しており、本研究では、原子精度で精密な分子性金属クラスター化合物の表面の化学反応場としての利用可能性に着目した。まず、新規なクラスター材料の合成とその表面における配位子の選択的化学反応手法の確立を行った。4-pyridineethanethiol(4-PyET)を用い金25量体クラスターを合成し、クラスター表面へのメンシュトキン反応により表面のカチオン電荷数の段階的制御が可能であることを見出した。例えばメチルトリフラートを利用することで、クラスター表面に正電荷が配置され、クラスター構造が歪んだことに由来する吸収スペクトルシフトを観察し、同時に質量測定から付加されるカウンターイオンの数に対応した分子イオンピークが観測された。反応時間によりカチオン化されたサイトの数は制御可能である、その平均数を計算すると最終的には18個中17.3個(95.9%)の配位子が反応された。 金クラスターのコア部位は分子的な特性を有するため様々な光反応への応用が可能だと期待されているが、チオラート(SR)保護クラスターの場合はその厚く密 な表面配位子層により反応基質と有効に近接できないため一般に光反応活性が高くない。合成した塩基性クラスター表面に対して金属イオンの配位を行うことで、表面に光触媒反応活性を与えることに成功した。光吸収により電子励起状態に至った金属クラスターコアから表面金属カチオンへの電子移動反応を定常・時間分解蛍光測定により解析し、その配位状態を吸収スペクトル、XPS等により明らかとした。また、金属コアから表面配位子への電子移動を高効率化することで、二酸化炭素還元光触媒反応の活性を制御可能であることを見出した。
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