研究実績の概要 |
本研究では,六方晶窒化ホウ素(h-BN)をモデル化合物として,フラックス法結晶育成による結晶外形変化の影響因子を理解し,その成長モデルを構築することを目的としている。前年度、第一原理計算により、低アスペクト比成長に有効と知られるホウ酸イオンについて吸着エネルギーを求めるとともに、実験条件の外挿探索と寄与因子可視化を可能とする機械学習アルゴリズムを開発した。本年度は、①ニューラルネットポテンシャル計算環境の構築と②外挿的データ駆動実験探索を進めた。 まず、ニューラルネットポテンシャル計算環境を構築した。この計算は、pythonベースで実行する必要があり、そのシステム構築に時間を要した。現在は400元素程度のBNスラブモデルに対するイオン吸着の計算が可能となった。例として、COイオンのBN吸着を計算したところ、N-C-O結合ができないことが分かった。本環境構築により、DFT計算の100倍以上の計算高速化に成功した。よって吸着エネルギーを多種イオンで網羅計算可能となった。今後20程度のイオンの吸着エネルギーを結晶面ごとに求めて、学習データに取り入れる予定である。 次に、外挿的データ駆動実験探索を実施した。ガウス過程回帰分析を利用して,成長モデルを作成したうえで,約4万通りの仮想的実験条件の中から,c軸成長・大型化を実現する可能性の高いものを選抜した。なお、提案実験条件中のフラックス情報は複数の物理量で表現し,実験利用時には重要因子を反映してフラックス名へ変換できるようにした。解析の結果,K2CO3, KNO3, RbCO3, Li2SO4, NaNO3等が有効反応場と提案されたものの、これらを使って実験検証した結果,いずれも粒成長に乏しいことが分かった。これは、実験空間がまだ不足していることを示している。引き続き有効フラックス提案・実験検証に取り組み,有効反応場探索を目指す。
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