h-BN結晶成長にはたらくフラックスの効果には,h-BN表面での吸着相互作用が考えられる。そこで本研究では,h-BNとフラックスの吸着相互作用を理解し,結晶成長への寄与を定量化することを目指した。 はじめに,計算科学により吸着エネルギーを調べた。ここでは,40種類程度のフラックス構成イオン種のh-BNに対する吸着エネルギーを求めた。いずれの場合も,h-BNのab面方向からの吸着が強いことがわかった。特に,カチオンと比べてアニオンの吸着エネルギーが高い傾向が見られた。アニオンがフラックス反応場での支配的な吸着因子といえる。 次に,結晶アスペクト比に対する多変量回帰分析を実施した。ランダムフォレスト回帰分析の結果,結晶アスペクト比に対して,決定係数が0.8以上の予測精度をもつ回帰モデルを構築できた。得られた変数重要度からは,フラックス由来アニオンの吸着エネルギーが比較的大きな寄与をもつことがわかった。h-BN側面がフラックス由来アニオンによりキャッピングされ,二次元層の成長抑制と,それに伴うアスペクト比変化に影響したと推察する。 本研究からは,フラックス由来アニオンがh-BNのab面と強く相互作用し,結晶アスペクト比変化に寄与することがわかった。本知見は,h-BNの結晶成長方位の定量的制御に向けた実験指針となる。具体的には,h-BN二次粒の粒界接合改善に向けて,有効フラックスの効率的な選抜・探索が可能となった。
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