本研究では、単層二テルル化モリブデン(2H-MoTe2)の面内に電場誘起によりpn接合を形成し、これに電流注入することで、近赤外光を放射する円偏光エレクトロルミネッセンス素子を開発することである。 まず、低接触抵抗の金属相/単層2H-MoTe2接合形成を実現するべく、バルクMoTe2結晶を利用した金属相形成技術を開発した。バルクMoTe2に結晶欠陥を意図的に導入し、これを400℃程度で熱処理することで2H-MoTe2の結晶構造が変化し、金属的な電気伝導特性を示すことを示した。これをTEM-EDX分析および偏光ラマン分光法を用いて結晶構造を分析することで、意図的に導入した結晶欠陥領域と単結晶領域の界面付近にて2次元テルル層が形成されることを明らかにした。次に、大面積かつ高品質な2H-MoTe2を作製するべく、化学的気相成長(CVD)法と金剥離法の開発に取り組んだ。CVD成長法については、ウェハ全面に膜厚が数nm程度の2H-MoTe2を結晶成長することに成功した。一方、金剥離法については、従来の機械的劈開法に比べ30倍程度の大きさの単層2H-MoTe2を作製した。また、この単層2H-MoTe2をチャネル材料として用いたFET素子において、金剥離後の大気暴露時間が増加すると、n型動作時のon/off比が増大することを明らかにした。これらの技術を基にして単層2H-MoTe2を発光層としたエレクトロルミネッセンス(EL)素子開発を行った。局所電場制御技術を用いてpn接合形成が実現できること、また、その界面から発光が起こることを示すとともに、白色光を照射した場合、光生成電流が発生することを明らかにした。
|