研究課題/領域番号 |
21K04824
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
アグス スバギョ 北海道大学, 情報科学研究院, 准教授 (30374599)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マグネタイト / 炭素吸着 / 走査型トンネル顕微鏡 / Cr反強磁性体探針 / スピン計測 |
研究実績の概要 |
炭素の吸着は1年目に導入した電子ビーム加熱蒸着装置を用いておこなった.通電加熱法と比較して安定な低いレートでの吸着が可能であり,クラスター状の炭素吸着が少なく,より均一な炭素原子吸着したマグネタイト薄膜表面が作製できた.使用した炭素吸着原はグラファイトロッドであったため,グラッシーカーボンフォイルを吸着原とした通電加熱法と比べて均一性が同程度であった.今後,グラッシーカーボンのロッドを電子ビーム加熱蒸着装置に用いることによりさらにクラスターの少ない炭素吸着が可能と期待できる. 電子ビーム加熱蒸着により吸着した炭素のSTS測定をおこなった結果,通電加熱法により吸着させた炭素と同様な局所電子状態を示すことが分かった.磁性体探針を用いたスピン偏極STM/STS測定において,スピン依存トンネル電流が観測されなかった.これは,使用した磁性体探針にスピン偏極トンネル電流の検出能力がなかった可能性もあることに加えて,スピン偏極電子状態を示す炭素吸着が少ないことも考えられる.そこで,炭素吸着をおこなった後に真空加熱の処理を試みた.僅かながら炭素クラスターが減り,炭素吸着上に取得したスピン偏極電子状態を示す炭素吸着が増えた.これは,加熱処理なしの場合は,マグネタイト表面には既に微量な水分子吸着もあるため,加熱により水分子が脱離したためだと考えられる.加熱条件の最適化による改善が期待できる. 他の課題である再現性の高いスピン偏極探針の作製において,従来のタングステン探針の先端上に成膜した磁性体や反強磁性体の探針作製の他に,エピタキシャル単結晶Cr反強磁性体膜を微細加工法によるCr単結晶探針の作製も進めてきた.原子分解STM像の取得やAu(111)表面上のSTS測定による探針先端の評価の結果より,スピン偏極トンネル電流の検出が可能なCr単結晶探針が作製できることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
炭素原子の吸着の均一性を高めることができ,さらに真空加熱によるスピン偏極したダウンスピン由来の電子状態のSTS測定の再現性も高めることができた.従来のスピン偏極探針を用いる炭素原子吸着したマグネタイト表面のスピン偏極トンネル電流のSTS測定まで至っていないが,スピン計測の再現性を高めるためにCr単結晶探針に着目して,エピタキシャル単結晶Cr反強磁性体膜の微細加工法によりCr単結晶探針の作製に成功した.この新たに開発したCr単結晶スピン偏極探針を用いることにより,加熱した炭素吸着表面上のスピン計測が可能と期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
真空加熱した炭素吸着マグネタイト表面を新たに開発したCr単結晶スピン偏極探針を用いるSTS測定を推進する.同時に,炭素吸着の加熱の効果をXPSなどで詳細に調べる.また,Cr単結晶スピン偏極探針の探針先端の結晶構造を評価し,STSにより検出されるスピン偏極トンネル電流との関連性を調べる.これらに加えて,炭素吸着によるマグネタイトの逆位相境界とその付近の電子状態への影響を調べてマグネタイト表面のスピン偏極度の向上の可能性を考察する.
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の電子ビーム加熱蒸着装置のフィラメントアセンブリーが価格高騰のと納期がかかるためホームメードしたためである.次年度にマグネタイト成膜装置の加熱機構のヒーターの修理に必要な備品およびグラッシーカーボンのロッドの購入に充てるため請求する.
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