研究実績の概要 |
(1) 微小金属膜(Al, Ti, Cr, Ni, Cu, Ag, Pt, Au)を堆積したSiO2/Si基板と、何も堆積させていない基板上で二硫化タングステン(WS2)薄膜の原子層堆積法成長を行い、それぞれの条件で得られた薄膜を光学顕微鏡、原子間力顕微鏡、X線光電子分光、ラマン分光により比較し、金属薄膜の種類が成長に与える影響を検証した。成長温度は300℃とした。金属薄膜を堆積しない場合、WS2の他に多くの不純物が確認された。反応性の低いAu・Ptや、反応性が非常に高いAl・Tiの薄膜を堆積した試料では、WS2に相当する成分がほぼ見られず、不純物が多く含まれた。一方、AuやPtより反応性が高く、AlやTiよりは低いAg・Cuでは,WS2に相当する成分が見られた。特にCuでは不純物がほぼ存在しないことが分かった。Ag・Cuの金属薄膜は、WS2薄膜の成長を促進し、より良質で不純物の少ないWS2薄膜の低温での成膜を可能にすることが示唆された。 (2) (1)と同様な実験をMoS2薄膜について行ったところ、Cuでは350℃以下、Agでは300℃以下、Ptでは250℃以下の成長温度条件下の試料において、各金属薄膜上にのみ選択的にMoS2成分が成長し、金属膜外には含硫黄成分が存在しないことが確認された。この結果から、金属薄膜上へのMoS2薄膜の領域選択成長が可能であることが実証された。その際、Cuは比較的高い成長温度まで、領域選択性を保つことが示された。 (3) 原子層堆積法により低温成長したWS2薄膜を硫黄雰囲気下でアニールした後、電極を蒸着して電界効果トランジスタを形成したところ、p型の動作特性を示すことが確認された。 (4) 剥離転写法で作製したしたMoS2電界効果トランジスタ素子を硫化アンモニウム溶液に浸したところ、浸漬時間により特性改善効果が異なることが確認された。
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