現在までにカーボンナノチューブ等の炭素材料表面部分に選択的に結合し、さらに電子顕微鏡による観察などにより結合力が異なると思われる数種類のペプチド鎖の合成を行ってきた。これらのペプチドは 10 - 20残基のアミノ酸からなっており、アミノ酸側鎖の電荷や分子量、構造等の検討により、それぞれのペプチドの電荷や親水性が異なっていることが明らかになっている。昨年度までは、これらのペプチドに対して主に電子顕微鏡観察により結合力の違いを観察していたが、電子顕微鏡観察用の試料の作成と観察に手間と時間が非常にかかるという問題があり、素早く効率的な観察や評価をすることが難しかった。結合力の評価において特にこの部分がネックとなっていたため、まず、この問題を解決しハイスループットの測定、評価方法の確立を行うため、新たにQuartz Crystal Microbalance/水晶振動子マイクロバランス (QCM) を用いた結合力の測定方法の検討を行った。 本年度は、Au電極上へカーボン蒸着を行うことでカーボン QCM 電極を作成し、このQCM 電極を用いて、従来からサンプルとしている分子量 480kDa の球殻状タンパク質であるフェリチンタンパク質の結合測定を行い、実際に結合の様子を測定できることを確認した。次に、フェリチンタンパク質の外部表面にカーボン結合ペプチド (DS-pep) を修飾したカーボン結合バイオナノ粒子 (DS-BNPs) を作成し、これらの DS-BNPs について QCM 電極への結合を測定し、DS-BNPの結合力が異なることを観察した。本方法により、結合測定方法はかなり改善されたがDS-BNPs の作成には遺伝子工学的手法を用いているため、作成にかなりの時間がかかってしまう。そこで、現在DS-BNPs の作成を進めながら、これと並行しQCMを用いた各種ペプチド鎖のみでペプチドの結合力の測定が可能となる溶液条件やファクターの検討を行い、プロセスの構築を進めている。
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