研究課題/領域番号 |
21K04832
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
馮 旗 香川大学, 創造工学部, 教授 (80274356)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ナノ複合メソクリスタル / 強誘電性 / 巨大圧電効果 / 巨大誘電効果 / 結晶格子歪み / ソフト化学法 |
研究実績の概要 |
本研究は、独自で開発したソフト化学法を用いて結晶方位を揃えた二種類のナノ結晶から構成された強誘電性ナノ複合メソクリスタルを作製し、Lattice Strain Engineering(結晶格子歪みの制御)による高性能圧電・誘電体材料を開発する。さらに機能発現のメカニズム解明により、強誘電性ナノ複合メソクリスタルに適用するLattice Strain Engineeringという新しい学問分野の基礎を構築する。2021年度はH1.07Ti1.73O4層状チタン酸(HTO)板状粒子の半分をBa(OH)2とソルボサーマル反応させ、BaTiO3/HTO(BT/HTO)ナノ複合メソクリスタルを合成した。さらにBT/HTOナノ複合中間体からBaTiO3/(Bi0.5K0.5)TiO3(BT/BKT)ナノ複合メソクリスタル合成を検討した。BT/HTOをBi2O3-KOH水熱反応系やソルボサーマ反応系で純粋なBT/BKTナノ複合メソクリスタルが得られなかった。そのため、BT/HTOをK2CO3-Bi2O3と混合して焼成することでBT/BKTナノ複合メソクリスタルが得られた。ナノ構造解析の結果からBT/BKTナノ複合メソクリスタルでは、BTとBKTナノ結晶は2次元エピタキシャル界面を形成したことが確認された。さらに得られたBT/BKTナノ複合メソクリスタルの誘電特性と圧電特性評価を行った。BT/BKTナノ複合メソクリスタルは、強誘電性を示し、BTおよびBKT単相より高い誘電率および圧電定数(d33)を示した。この結果からBTの格子定数はBKTより大きいため、 BTとBKTナノ結晶の2次元エピタキシャル界面形成によって、結晶格子ミスマッチによる格子歪みが発生し、圧電効果と誘電効果の増大が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、主に「ナノ複合メソクリスタルの作製とナノ構造解析」と「メソクリスタルの圧電・誘電特性評価と解析」の二つの部分からなる。これまでBT/HTOからBT/ST、BT/BNT、BT/BiTナノ複合メソクリスタルの作製に成功した。2021年度は、BT/HTOからBT/BKTナノ複合メソクリスタルの作製に成功し、ナノ構造解析を行い、誘電特性と圧電特性評価を行った。合成に関しては、条件を制御すればBT/BKTナノ複合メソクリスタルの合成条件を明らかにした。ナノ構造解析により、エピタキシャル界面が形成されることを確認した。特性評価に関しては、結晶格子ミスマッチによる格子歪みによる誘電特性と圧電特性の向上が見られた。しかし、当初予想した3次元エピタキシャル界面の形成がなく、2次元エピタキシャル界面になっており、3次元エピタキシャル界面より誘電特性と圧電特性の向上効果が小さいことを確認し、新たな知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度からBT/HTOからBT/CTナノ複合メソクリスタルを作製する。また、HTO板状粒子の半分をSr(OH)2と反応させ、ST/HTOナノ複合メソクリスタルを合成し、ST/HTO中間体からST/CT、ST/BNT、ST/BKT、ST/BiTナノ複合メソクリスタルの作製を検討する。作製した各種ナノ複合メソクリスタル試料の強誘電特性、圧電特性、誘電特性を評価する。強誘電体特性評価装置を用いて作製したナノ複合メソクリスタルの分極-印加電場(P-E)ヒステリシス曲線を測定し強誘電特性を評価する。誘電特性評価装置を用いて誘電率およびその温度依存性を測定し、誘電率の増大効果およびキュリー温度の向上効果を調べる。圧電効果について、ピエゾ応答顕微鏡(PFM)を用いてナノ複合メソクリスタル板状粒子の圧電特性を評価する。ナノ構造解析・組成解析等の結果と強誘電特性、圧電特性、誘電特性の測定結果と比較し、ナノ複合メソクリスタルの格子定数ミスマッチによる格子歪み、異なる結晶系や結晶構造の組合せ、強誘電性や常誘電性の組合せ等による影響を系統的に解析し、巨大圧電効果・巨大誘電効果の発生メカニズムと最適な組合せを系統的に解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度にすこし残額があるが、金額が少ない。残額分は2022年度の研究に利用し、研究を確実に進めるようにする。
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