研究課題/領域番号 |
21K04833
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
八ツ橋 知幸 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (70305613)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | レーザー誘起プラズマ / 金属錯体 / 高強度フェムト秒レーザー / 高パルス繰り返しレーザー |
研究実績の概要 |
我々は近赤外フェムト秒レーザーを用い、水の多光子イオン化により生じる水和電子によって貴金属イオンを還元、あるいは遷移金属錯体の多光子吸収によるナノ粒子の作製を報告してきた。本研究ではこのレーザープラズマ融合によって有機金属錯体やイオンを原料とするボトムアップアプローチによって合金ナノ粒子の作製を試みた。 単一金属ナノ粒子の作製にはこれまでフェムト秒レーザー(波長0.8 μm、パルス幅30 fs、発振1 kHz)を用いてきたが、繰り返し周波数が小さいためナノ粒子の収量が極めて少ないことが問題であった。そこで、新たに高パルス繰り返しが可能なピコ秒レーザー(Spectronix LDH-V2011、波長355 nm、パルス幅15 ps、出力 <18 W、発振 <1 MHz)を導入した。溶液上方からレーザーを照射する必要があるため、テレスコープを用いて照射光学系を新たに構築した。遷移金属錯体を原料とし、単体(Fe、Co、Ni)ではナノ粒子の生成がそれぞれ確認できた。しかしながら、現在のところ遷移金属錯体混合系では合金生成の明瞭な結果が得られていない。そこで貴金属を含み表面プラズモン共鳴と同時に磁気特性をもつ三元合金ナノ粒子(AuFePt)の作製も試みた。保護剤としてPolyvinylpyrrolidone(PVP)を加えた塩化金酸水溶液へのレーザー照射では金ナノ粒子生成を示す明瞭なプラズモン吸収が530 nm付近に見られ、出力、照射時間、PVPの分子量とナノ粒子生成の関係を検討した。一方、金、白金、鉄、およびPVPの混合水溶液では金単独とは異なりレーザー出力に強く依存する特徴的な吸収変化を示した。しかし、合金形成では金のプラズモン吸収が消失することが予想されるため、この変化は100 nmを越える大きな金ナノ粒子あるいは凝集体の生成と分解を示唆すると思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までにアセチルアセトナート錯体の水溶液を原料として単一金属(Fe、Co、Ni)のシングルナノメートルオーダーサイズ粒子の生成には成功した。しかしながら、遷移金属錯体混合系の水溶液では現在のところ単一金属と同じ実験条件の下では合金生成の明瞭な結果が得られていない。特に合金形成を明確に示すことの出来る元素マップ測定が出来ていないため元素組成の決定までに至っていないのが現状である。これは用いた学内の電子顕微鏡の性能低下によるもの、あるいは数十ナノメートル程度の範囲でナノ粒子単独での測定を試みたためと思われる。試行錯誤の結果、他の試料ではあるが1ミクロン程度の広い範囲かつビームスポットを広げることによって元素マップ測定に成功した。金属塩(Au, Fe, Pt)を用いた実験では非常に興味深い現象が認められたが、酸化還元電位の貴なものからの還元を防ぐことはできず、合金作製には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
紫外ピコ秒レーザーを用いた場合はレーザー照射による液体の温度上昇が顕著であった。また、現状では生成粒子への再度のレーザー照射によって粒子の融合や分解が生じることを防ぐことはできない。そのためフローセルを新たに製作して、溶液を循環させる連続光照射系を構築して実験を行う。すでにアルミニウムブロックからフローセルを試作し、水を循環させるために表面のアルマイト処理を行った。しかし、ホースとの接続部などの表面処理は難しく白さびが発生した。そのため、テフロンブロックの加工あるいは3Dプリンターによって所望のフローセルの製作を試みる。初年度で用いた紫外ピコ秒レーザーはレンタル料が3倍となることが予告され、本予算では継続して使用することが出来ない。そのため、繰り返し周波数、パルス幅、そして出力では劣るが、近赤外、可視光、そして紫外光の出力が可能なピコ秒レーザーを購入して実験に用いるとともに、近赤外フェムト秒レーザーを積極的に活用することにした。引き続き金属錯体混合系、そして金属錯体-金属塩混合系を用いて合金作製を試みる予定である。作製する合金粒子の同定には元素マップの測定が必須であり、測定用試料の準備も含めて電子顕微鏡による元素マップ測定の手順を改良する。
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次年度使用額が生じた理由 |
発表を予定していた学会が全てオンライン開催になったため。また、ピコ秒レーザーのレンタル料を他の財源で賄うことが出来たため。当該助成金は新たに導入するピコ秒レーザー(紫外、可視、近赤外発振)に必要な光学部品に使用予定である。
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