研究課題/領域番号 |
21K04834
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
田原 圭志朗 香川大学, 創造工学部, 准教授 (50622297)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 有機半導体 / ベンゾチエノベンゾチオフェン / ナノ薄膜 / 電気化学発光 |
研究実績の概要 |
絶縁膜表面での錯体薄膜の応用に向けて、令和4年度は、単結晶トランジスタおよび電気化学発光(ECL)を検討した。 前年度に、ベンゾチエノベンゾチオフェン(BTBT)のピリジル誘導体とかさ高いルイス酸であるトリスペンタフルオロフェニルボラン(TPFB)をルイス塩基/ルイス酸相互作用により結合した複合体を合成していた。この複合体の単結晶の作製に成功し、X線構造解析を行った。BTBT誘導体は、一般に、結晶状態でヘリンボーン構造を取る。本研究で用いたTPFBは、このBTBTの二次元配列を一次元πスタックカラム構造へと変換した。トランスファー積分を算出したところ、二量体~四量体のレベルで、電子的に相互作用することが明らかになった。この複合体の単結晶をシリコン基板表面に張り付け、トランジスタ動作を評価した。今後詳細を検討する必要があるが、複合体はn型有機半導体として機能することが確認できた。 複合体のECL特性をジクロロメタン溶液中で評価した。BTBTのピリジル誘導体と比較して、ECL強度が156倍に向上した。ルイスペア形成によるECL増強現象を見出した。電気化学挙動を詳細に評価し、TPFBが電気化学的な保護基として、生成するラジカルカチオンとラジカルアニオンを安定化する機構を明らかにした。さらに、結晶性の薄膜を得る手法として、複合体のアセトニトリル溶液を自然蒸発する方法を確立した。この方法を利用し、グラッシーカーボン電極を複合体で修飾した。この修飾電極をリン酸緩衝生理食塩水に接触させ、ペルオキソ二硫酸カリウムを共反応剤として、-2.4 V vs. Ag/AgClを印加すると、ECLが観測できた。この固体薄膜ECLは、超分子配列を活かしており、電気化学的なドーピングとエキシトンの非局在化の特長がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
単結晶トランジスタの評価が、当初の想定より時間がかかったため。電気化学発光の他にも、抵抗変化型メモリの検討にも時間を要したため。また、令和4年度に所属機関の異動があり、研究環境を整える必要があったため。
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今後の研究の推進方策 |
TPFBとの複合化に拘らず、目的とする電荷捕獲層の合成化学的手法を幅広く検討する。BTBTに官能基を二つ導入した二置換体の合成法を検討し、新規ナノ薄膜の構築や膜厚の制御をスピーディに検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
基幹物質の合成と単結晶トランジスタの評価が、当初の想定より難航したため。また、現地参加を予定していた国際学会がオンライン開催となったため。さらに、令和4年度に研究機関の異動があり、研究を効率的に進められなかったため。 今後、有機合成、トランジスタ作製などのための消耗品として使用する計画である。また、トランジスタ評価のための機器を使用する。さらに、別の国際学会での発表を検討する。
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