研究課題/領域番号 |
21K04838
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研究機関 | 岐阜工業高等専門学校 |
研究代表者 |
羽渕 仁恵 岐阜工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (90270264)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 窒化炭素 / 二次元結晶 |
研究実績の概要 |
層状窒化炭素(CN)は、窒素と炭素による二次元シートが層状に重なった物質で、水の水素と酸素への分解などの光触媒作用を示す半導体として注目されている。通常、CNは メラミン等の熱重合により粉末状態で得られるが、半導体としてエレクトロニクス分野に応用するためには薄膜合成が不可欠である。本研究では熱化学気相成長法(熱CVD)によりCN薄膜を合成し二次元物質として発現する新しい電子物性を明らかにすることが目的である。 前年度は、合成圧力を10から480kPaまで変化させて薄膜を合成すると、圧力を高くすると配向性がよくなり、圧力を大気圧以下にすると結晶性は悪くなるが光感度は向上することが分かった。今年度は、合成温度を変化させることで、膜厚を制御した。これにより2つの成果が得られた。 1) 金属上に10nm以下のCN薄膜を合成し、光電子収量分光(PYS)、紫外光電子分光法(UPS)および低エネルギー逆光電子分光法(LEIPS)によって価電子帯と伝導帯の構造評価をした。PYSおよびUPSからHOMOの真空を基準としたエネルギーは、いずれも-6.9 eV、LEIPSからLUMOは-3.6 eVと見積もられ、これらの差よりバンドギャップは3.3 eVと計算できる。フェルミ準位はLUMOから0.7 eV下がったところにあり、電気伝導の温度依存性から求めた活性化エネルギーとほぼ一致した。 2) CNの機械的剥離により薄層化は困難であったが、合成温度を変えることで、平均膜厚がCNの2次元の窒素炭素結合シートが数層分の極薄膜を合成できるようになった。AFMで薄膜表面を観測したところ、グラフェンのような一層のステップは観測されなかった。これはいわゆる島状に薄膜が初期成長するためと考えられる。現在は石英ガラスの上に合成しているが、基板を変えると初期成長も変化すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
機械的剥離により薄層化は困難であったが、CVDでの成長で数nm以下の薄膜は得られるようになった。また、その薄膜は透過率スペクトルの形状は、膜が厚い場合と異なることから、二次元半導体物質としての発現する新規電子物性の一つとして考えることができる。よって本研究の目的の1つは達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
薄い窒素炭素結合薄膜において、どのような物性変化が生じるか透過率スペクトル、光ルミネッセンススペクトルを測定し明らかにする。また、薄膜の初期成長において基板を変えるとどう変化するかを調べる。キャリアを評価するため窒化炭素のMOS-FETを作成して評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入する予定だった物品が別の予算で購入できたため、物品について予定より支出が少なくなった。今年度は基板等の消耗品を当てる予定である。
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