近年、金属ナノ粒子の特異な構造や光学特性が注目されており、その特性は結晶サイズ、装置や粒子同士の接触、粒子が分散された環境(溶媒)に強く影響されることが知られてきた。これまで金属ナノ粒子の研究は主にナノ粒子の集団に対して行われてきた。しかし、サイズや形状でその物性が変化してしまうナノ粒子の性質を解明するためには、ナノ粒子1粒に対する測定及び解析が必須である。しかし孤立した金属ナノ粒子1粒に対する測定では確立した試料保持法がないためにその研究は困難を極めている。本研究では、ラゲール・ガウスモード(LGモード)のレーザーを用いて金属ナノ粒子1粒を空気中に非接触で保持し、放射光X線マイクロビームを照射することにより、金属ナノ粒子1粒のX線回折像を測定する。また、小型分光器を用いて金属ナノ粒子1粒の光学特性を同時に測定することにより、金属ナノ粒子1粒の接触効果・粒径・結晶構造と光学特性の関係を明らかにし、従来の多粒子に対する測定では得られなかった情報を得る。 令和3年度には、金属ナノ粒子1粒のトラップを実現するために、波長532nm、LGモードのレーザー光源を整備し、さらにこのレーザーを用いたトラップ装置を作成した。令和4年度には、粒径100nmの白金ナノ粒子を用いたトラップ条件の探索、ファイバー入力式小型分光器を用いて、空気中に非接触でトラップされた金属ナノ粒子1粒の分光システムを開発した。令和5年度には、SPring-8の放射光を用いて金属ナノ粒子1粒のX線回折像を測定するための装置を完了させた。また、様々な金属ナノ粒子や誘電体ナノ粒子に対するトラップ条件を最適化するための数値計算やラップしたナノ粒子の回転状態に対するシミュレーションを行った。
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