本研究では様々な疾患への関与が明らかになってきているアクアポリン(Aquaporin; AQP)を陽電子放出断層撮影(Positron Emission Tomography; PET)により解析するためのフッ素18標識薬剤を開発することを目標としていた。PET用AQPイメージング薬剤としては過去に炭素11で標識されたTGN-020を申請者らが開発しており臨床研究も行っていたが、炭素11の半減期が短い(約20分)等の理由がAQP画像化の普及・発展の妨げであると考えられるため、より半減期の長いフッ素18(半減期は約110分)で標識された薬剤の開発を目指した。 本年度はAQP4イメージング用のフッ素18標識TGN-052([18F]TGN-052)に続いて、昨年度に選出していたAQP1イメージング用の化合物のTGN-091と、TGN-020のフッ素標識版ともいえる化合物のTGN-074についても自動合成装置を用いて各々PET用標識薬剤である[18F]TGN-091および[18F]TGN-074薬剤を製造する方法を確立した。 続いて製造したPET用標識薬剤をマウスに投与してPET撮像も行った。PET撮像では野生型に加えて、[18F]TGN-052と[18F]TGN-074においてはAQP4を、[18F]TGN-091においてはAQP1をノックアウトしたマウスも用いて行った。 結果としては[18F]TGN-052についてはAQP4イメージング剤として機能していると考えられたが、[18F]TGN-074および[18F]TGN-091についてはAQP1/AQP4用あるいはAQP1用のイメージング剤としては使用可能ではないと判明した。 いずれの薬剤も投与後60分程度経過すると骨への集積傾向が見られた。これは生体内での代謝により18Fが遊離しているためと考えられ、この点においても課題が残された。
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