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2023 年度 実施状況報告書

エクソソーム内封マイクロRNA解析マイクロデバイスの開発

研究課題

研究課題/領域番号 21K04851
研究機関中央大学

研究代表者

津金 麻実子  中央大学, 理工学部, 共同研究員 (00469991)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワードリポソーム / エクソソーム / マイクロ流体デバイス
研究実績の概要

本研究では、ジャイアントリポソームをバイオリアクターとして用いて、エクソソーム内封マイクロRNAを高感度、簡便に検出可能なマイクロデバイスの開発を目的とする。主にソフトリソグラフィ技術を用いて作製されるデバイスは、(1)回収エリア、(2)移送エリア、(3)反応・検出エリアの3つのエリアからなる。
3年目である本年度は、まず(2)移送エリアの検討を行った。エクソソームが結合した磁気ビーズはデバイスの下に設置した磁石をスライドさせて回収エリアから反応・検出エリアへ移動させる。その際、サンプル溶液の混入を最小限にして磁気ビーズのみを移送するため、デバイスの表面処理方法を検討した。その結果、デバイスの作製に用いるポリジメチルシロキサン(PDMS)に種々のコーティング剤を塗布して、親水・疎水加工できることを確認した。
また、昨年度に引き続き、 (1)回収エリアにおける振動誘起流れを用いたサンプルからのエクソソーム回収の条件検討を行った。円柱ピラーを有するデバイスにエクソソームとアフィニティー磁気ビーズを導入し、振動の付与により溶液を混合して、磁気ビーズへのエクソソームの結合を促す。エクソソームを模擬したナノサイズのビーズと直径マイクロメートルオーダーの磁気ビーズのアビジン・ビオチンによる結合と、ピラー周囲の流れ場の関係を評価したところ、周波数や振幅などの振動パラメーター、ピラー間距離などの条件が結合に影響することが明らかとなった。また、エクソソームとアフィニティービーズからなる凝集体の大きさを測定することにより、エクソソームの定量評価が可能であることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、移送エリアの作製に向けたデバイスの表面処理方法を検討した。ポリジメチルシロキサン(PDMS)にフッ素樹脂や界面活性剤などの塗布によって、水滴とデバイス表面が接する際の角度である接触角の変化を確認でき、デバイス表面の親水性・疎水性の制御が可能であった。この結果は、夾雑物を排除しながらエクソソーム結合ビーズを移送することを目的とした、デバイス表面における親水・疎水加工のパターニングに活用する。
また、振動するマイクロピラー周囲に誘起される局所流れである振動誘起流れを用いた、エクソソームの回収についても進展がみられた。直径がナノメートルオーダーのエクソソームをマイクロメートルオーダーの磁気ビーズに効率的に結合させるマイクロピラーの配置、振動周波数などの最適な条件が明らかになってきた。さらに、エクソソームとビーズからなる凝集体のサイズを顕微鏡での明視野観察で測定することでエクソソームの定量が可能であると示唆される結果を得ている。
このように、マイクロデバイスの各エリアにおける実験条件の最適化が進んでいることから、研究はおおむね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

本研究課題で開発を目指すデバイスの回収エリア、移送エリア、反応・検出エリアという3つのエリアについて、実験条件が確立してきた。反応・検出エリアにおける技術である2つの膜小胞の融合とリポソーム内でのマイクロRNAの増幅・蛍光検出、回収エリアにおける技術である振動誘起流れを用いたアフィニティービーズによるエクソソームの回収については論文を執筆、投稿中である。今後はこれらの各エリアの技術を統合したデバイスの作製やシステムの妥当性の検証を試みる。

次年度使用額が生じた理由

本研究は研究期間が3年間の予定であったが、最終年度内に投稿中の論文の採択が決定しなかった。そこで、研究期間を延長し、オープンアクセス誌への論文の投稿料として約40万円を次年度使用額とした。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2023 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Single-cell trapping and retrieval in open microfluidics2023

    • 著者名/発表者名
      Murakami Tomoki、Teratani Hiroto、Aoki Dai’ichiro、Noguchi Masao、Tsugane Mamiko、Suzuki Hiroaki
    • 雑誌名

      iScience

      巻: 26 ページ: 108323~108323

    • DOI

      10.1016/j.isci.2023.108323

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Identifying Conditions for Protein Synthesis Inside Giant Vesicles Using Microfluidics toward Standardized Artificial Cell Production2023

    • 著者名/発表者名
      Ushiyama Ryota、Nanjo Satoshi、Tsugane Mamiko、Sato Reiko、Matsuura Tomoaki、Suzuki Hiroaki
    • 雑誌名

      ACS Synthetic Biology

      巻: 13 ページ: 68~76

    • DOI

      10.1021/acssynbio.3c00629

    • 査読あり
  • [学会発表] 振動誘起流れによるナノ粒子検出系の流体力学的評価2023

    • 著者名/発表者名
      金子完治,津金麻実子,長谷川洋介,早川健,鈴木宏明
    • 学会等名
      化学とマイクロ・ナノシステム学会第 47 回研究会
  • [学会発表] 無細胞転写翻訳系で合成されたナノポアペプチドの単分散 GUV への挿入の評価2023

    • 著者名/発表者名
      南條哲至,津金麻実子,松浦友亮,鈴木宏明
    • 学会等名
      化学とマイクロ・ナノシステム学会第 47 回研究会
  • [学会発表] Synthesis and Direct Insertion of Membrane Protein into Monodisperse GUVs Fabricated by a Microfluidic Device2023

    • 著者名/発表者名
      S. Nanjo, M. Tsugane, R. Yoneyama, R. Ushiyama, T. Matsuura, H. Suzuki
    • 学会等名
      Transducers 2023
    • 国際学会
  • [学会発表] Hydrodynamic Enhancement of Agglutination-based Nanoparticle Detection Driven by the Vibration-induced Flow2023

    • 著者名/発表者名
      K. Kaneko, M. Tsugane, Y. Hasegawa, T. Hayakawa, H. Suzuki
    • 学会等名
      The 27th International Conference on Miniaturized Systems for Chemistry and Life Sciences (MicroTAS 2023)
    • 国際学会
  • [学会発表] Evaluation of Membrane Proteins Synthesized Using the in situ IVTT System for Insertion into Monodisperse GUVs2023

    • 著者名/発表者名
      S. Nanjo, M. Tsugane, T. Matsuura, H. Suzuki
    • 学会等名
      The 27th International Conference on Miniaturized Systems for Chemistry and Life Sciences (MicroTAS 2023)
    • 国際学会
  • [学会発表] 振動誘起流れによるナノ粒子検出に向けた粒子捕捉の実験的および数値的研究2023

    • 著者名/発表者名
      金子完治,津金麻実子,長谷川洋介,早川健,鈴木宏明
    • 学会等名
      第 14 回マイクロ・ナノ工学シンポジウム
  • [学会発表] 無細胞転写翻訳系による膜タンパク質の合成と単分散 GUV 膜への挿入の評価2023

    • 著者名/発表者名
      南條哲至,津金麻実子,松浦友亮,鈴木宏明
    • 学会等名
      第 14 回マイクロ・ナノ工学シンポジウム
  • [学会発表] 表面弾性波による膜小胞破壊の検討2023

    • 著者名/発表者名
      髙田隆平,金子完治,縄田一樹,佐藤玲子,津金麻実子,R. Zhong, T. J. Huang, 鈴木宏明
    • 学会等名
      化学とマイクロ・ナノシステム学会第 48 回研究会
  • [学会発表] オープン型マイクロ流路による細胞・粒子のペアリングと回収2023

    • 著者名/発表者名
      寺谷浩登,津金麻実子,鈴木宏明
    • 学会等名
      化学とマイクロ・ナノシステム学会第 48 回研究会
  • [学会発表] マイクロ流体デバイスによるポリマーソーム作製とマイクロリア クターとしての機能評価2023

    • 著者名/発表者名
      權藤悠貴,米山遼太郎,南條哲至,津金麻実子,鈴木宏明
    • 学会等名
      化学とマイクロ・ナノシステム学会第 48 回研究会
  • [備考] 中央大学理工学部精密機械工学科鈴木宏明研究室ホームページ

    • URL

      https://nanobio.r.chuo-u.ac.jp/

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公開日: 2024-12-25  

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