研究課題/領域番号 |
21K04853
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
井上 健司 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (40203228)
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研究分担者 |
馮 忠剛 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (10332545)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 再生組織 / 灌流ネットワーク / 磁気駆動 / 細胞培養 / 精密ステージ / マイクロハンド |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、再生軟組織内部に灌流用の能動型流路ネットワークを形成する方法を提案することである。基本ユニットである灌流パーツは、円筒状のポリウレタン樹脂内部に鉄粒子を分散させた構造を持つ。外部から磁場を印加すると鉄粒子が引き寄せられて圧縮し、磁場を取り除くとポリウレタンの弾性によって元に戻る。よって、磁場を周期的に印加することで、パーツをポンプのように作動させることができる。この灌流パーツを量産し、構成したい流路に沿って密に並べた管を造る戦略と、疎に配置して培養液を微拍動させ、内皮細胞の血管新生能力により流路を発生させる戦略で、流路ネットワークを形成し、外部磁場により能動的に灌流を発生・制御する。 令和3年度は、量産を可能にする灌流パーツ作成プロセスを考案した。ポリウレタン樹脂をテトラヒドロフラン溶剤に溶かして鉄粒子を混ぜた溶液に、油を塗った極細の金属線を浸ける。金属線を溶液から引き上げて乾燥させると、先端がふさがった円筒構造が金属線の周りにできる。先端部分だけを溶剤に浸して樹脂を溶かし、金属線から引き抜けば、中空円筒状の還流パーツが完成する。パーツの弾性や鉄粒子の含有量は、溶液を調合する際に調整する。以上のプロセスで、直径0.3mm、長さ1mmの灌流パーツが安定して作成できることを確認した。また、作成した灌流パーツにネオジム磁石を近づけたり遠ざけたりすると、圧縮・膨張が起こることも確認した。さらに、灌流パーツを金属線から引き抜く前段階までをXYZステージを使って自動化した装置を作成し、量産が可能なことを示した。 灌流パーツを再生軟組織内部に配置する場合、鉄粒子の細胞培養適合性が問題となる。そこで、金メッキを施した鉄粒子を含むポリウレタンフィルムにラット胎児由来線繊芽細胞を播種する培養実験を行い、金メッキが細胞培養に有効であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で目的とする灌流用の能動型流路ネットワークを形成するためには、均一な還流パーツが大量に必要となる。令和3年度の研究により、均一な灌流パーツの自動作成が可能になったことは、大いなる進展といえる。複数の金属線を使い、かつ装置を長時間自動で稼働すれば、大量の灌流パーツを作成できる。また、鉄粒子を金メッキすることで細胞培養適合性が向上することも、還流パーツを再生軟組織内部に配置する上で重要な発見といえる。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、還流パーツ作成プロセスの完全自動化を目指す。次に、マイクロハンドを用いて灌流パーツを3次元再生軟組織内部に分散配置する方法と、内部の灌流パーツを局所的に磁気駆動する方法を開発する。灌流ネットワークを形成する方法としては、構成したい流路に沿って灌流パーツを密に並べた管を造る戦略と、灌流パーツを疎に配置し、灌流パーツの圧縮動作により培養液を微拍動させ、内皮細胞の血管新生能力により流路を発生させる戦略の2つを試みる。 令和5年度は、提案手法による3次元再生軟組織内の灌流効果および細胞機能を評価する。3次元培養基質にコラーゲンゲルを、培養細胞にラット肝細胞、ラット内皮細胞および線維芽細胞を利用し、培養実験により培養細胞の代謝状況と内皮細胞による血管新生を調べ、本研究の有効性を検証する。
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