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2022 年度 実施状況報告書

霧化メカニズムの解明と大気圧プラズマによるナノマイクロプラスチックの高精度解析

研究課題

研究課題/領域番号 21K04856
研究機関愛知工科大学

研究代表者

松浦 寛  愛知工科大学, 工学部, 教授 (50561411)

研究分担者 古川 祐光  国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究チーム長 (00300898)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード霧化メカニズム / マイクロプラスチック / μプラスチック内重金属 / 大気圧プラズマ
研究実績の概要

<本研究の目的>:本研究は、霧化メカニズムの解明およびマイクロプラスチックを内包した霧化プロセスの解明および大気圧プラズマによるμプラスチック内重金属分析の3テーマを有機的に関連付ける事により、地球規模で問題となっているμプラスチックの環境への分散プロセスを定量化する事を目的としている。

<霧化メカニズムの解明>:100年近く未解明問題として残されていた霧化メカニズムに対し、振動板を利用した新しい霧化方式を開発し、霧化直前の温度分布をマイクロ温度計により計測した。解析の結果、キャビテーション説や沸騰説が霧化の主要因ではない事を突き止めた。また、振動板から発生する微弱音に対し音響フーリエ解析を行い、振動板の共振周波数および霧化発生時の動画撮影により、霧化メカニズムの主要因は、表面波振動説が最有力である事を実験的および理論的に突き止めた。これら2つの研究結果は、JJAPとJAPの2つの論文誌に受理・公開された。しかし、現時点では、0.1μsec以上の分解能をもつ高速度カメラ撮影による、確定的な実験的根拠を示すには至っていない。

<霧化液滴中のμプラスチック特性>:当該研究対象に関しては、上記振動板を利用して霧化された液滴中に、どの程度の大きさのμプラスチックが、どの程度の数密度で含まれているかを実験的に検証している。本研究に関しては、近日中(遅くとも研究期間中)に実験結果をまとめ、論文や学会で発表する予定である。
<大気圧プラズマ関連>:本研究対象に関しては、上記μプラスチックを内包した霧化実験と並行し、ICP方式による大気圧プラズマ発生装置の開発に注力している。現時点における装置開発の進捗状況としては、大気圧アルゴンプラズマの点灯に成功し、現在、霧化溶液を内包した任意ガスの大気圧プラズマの発生を目指している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

霧化メカニズムの解明:本研究に関する進捗は、おおむね順調だが、今後の進捗は困難であると判断している。この判断の理由は、0.1μsec以上の分解能を持つ高速度カメラの購入(3000万円程度)あるいは開発を実現しない限り、霧化メカニズムの解明に決定的な実験的根拠を示す事ができないためである。ただ、霧化の主要因が表面波振動に起因する、ほぼ確定的な実験的および論理的根拠を2つの論文として公開できたため、計画に対し大きな遅れではないと考えている。

μプラスチックを内包した霧化プロセス:本研究に関する進捗は、やや遅れていると判断している。この判断の理由は、現在、実験遂行中であり、実験データに有意な結果を見出す事ができれば計画通りの進捗であるが、有意な結果を見出せなければ遅れていると判断すべきだと考えている。今後しばらく実験を繰り返し、データの有意性を統計的に判断する必要がある事から、計画当初よりもやや遅れていると考えている。

大気圧プラズマによるμプラスチック内重金属の分析:本研究に関する進捗は、複合的影響により遅れていると判断している。現在、実験装置の開発および改良を並行して実施しているが、現時点では、ICP方式による大気圧アルゴンプラズマの点灯を確認した状況である。計画では、任意ガスの大気圧プラズマ化および液滴含有雰囲気でのプラズマ化を達成すべき時期である。予定より遅れている最大の理由は、装置に搭載する半導体の入手に予想以上の問題が生じたためである(FETの価格高騰と半年から1年の納期の遅れなど)。具体的には、現在開発中の装置では、プラズマ点灯用のFETの定格周波数が、予定していた周波数の1/10程度のものしか入手(搭載)できていない。このため、プラズマ化しやすいアルゴンガスでは点灯可能であるが、現状の装置構成では、任意ガスや液滴存在下でのプラズマの発生は容易ではないと考えている。

今後の研究の推進方策

霧化メカニズムの解明研究に関する今後の推進策:本研究を完遂するためには、高速度カメラを所有する、他の研究機関と共同で、霧化が表面波の共振振動により連続的に発生している状態を動画撮影する必要がある。高速度カメラさえ入手できれば、実験の遂行は可能であるが、残された研究期間を考えると、以下2つの研究を優先すべきだと考えている。

霧化液滴中へのμプラスチックの内包に関する今後の推進策:本研究に関しては、現在行っている実験を基に、論文として公開するか、実験を中止するか判断する予定。μプラスチックを内包した霧化現象も人工的自然現象の一つである限り、何らかの法則に従っていると考えられるが、この法則を統計データを基に解明できるかどうかが今後の焦点になると考えている。

大気圧プラズマによるμプラスチック内重金属の分析に関する今後の推進策:本研究に関しては、計画より遅れている事に対し言い訳の余地はないが、素子の入手努力と現行装置の改良は継続し、今後も計画当時の目標達成を目指す予定である。今回、素子の入手困難のため、予定していたプラズマ点灯周波数が1/10になり、研究の遅れというデメリットを生じてしまった。しかし不幸中の幸いとしては、少なくともアルゴンガスに関しては、従来よりも低い周波数で点灯できたため、安価で入手可能な素子により、大気圧アルゴンプラズマの利用は可能だと判明した点は大きなメリットだと考えている。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額として237円が生じてしまったが、この金額は海外(Digi-Key)から部品を取り寄せた際に生じた、為替の変動に起因したものである。この金額は、次年度、必要な文房具(ボールペンやメモ帳)の購入費用として有効活用する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Acoustic analysis of jet atomization for uniform dispersion of nano- and micro-droplets2022

    • 著者名/発表者名
      Hiroshi Matsuura、Hiromitsu Furukawa、Atsushi Kondo、Tamio Tanikawa、Hideki Hashimoto
    • 雑誌名

      Journal of Applied Physics

      巻: 132 ページ: 224502-1~10

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Optimal conditions and generation mechanism of jet atomization for uniform distribution of nano- and micro-droplets2022

    • 著者名/発表者名
      Hiroshi Matsuura、Hiromitsu Furukawa、Yoshinori Watanabe、Shin Murakami、Yuji Ishihara、Tamio Tanikawa、Hideki Hashimoto
    • 雑誌名

      Japanese Journal of Applied Physics

      巻: 61 ページ: 085501-1~8

    • DOI

      10.35848/1347-4065/ac7a7d

    • 査読あり

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公開日: 2023-12-25  

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