研究課題/領域番号 |
21K04857
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
鈴木 健一郎 立命館大学, 理工学部, 教授 (70388122)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | MEMS / 振動子センサ / pnダイオード / ビルトイン電圧 / 温度変動 / 分析センサ |
研究実績の概要 |
近年、水晶振動子マイクロバランス(QCM)が化学・バイオセンサ応用で注目されている。水晶は機械振動数の温度依存性が小さいために広く用いられているが、振動子センサの薄型化が限界に近付いているため、さらなる高感度化が困難になりつつある。一方、シリコン振動子センサにおいては、真空を利用できない環境下を考慮すると同時に,振動子自身の機械的温度特性を抑える新たな原理を導入することが必須である。我々は空乏層が機械特性の温度変動を抑えることができる特長をもつことに注目し,これを利用して、ほぼ全体が空乏層からなる(2 um程度)小型のシリコン振動子を(MEMS技術を利用した)流路の中に形成した構造をもつセンサの研究に挑戦する。 本研究は、振動子センサ応用を目指して、空乏層からなるシリコンpnダイオード振動子の高周波特性を定量的に明らかにすることを主な目的とする。 シリコン振動子の検出方法として、a)ピエゾ抵抗、b)ピエゾ接合、c) pnダイオード静電容量の三種類の異なる原理を利用することができる。我々は以前にピエゾ接合と静電容量センサの比較を行って両者が互いに干渉するバイアス電圧条件があるという興味深い現象を見出した.今年度はこれらの異なる検出方式について定量的な比較検討を行った. シリコン振動子の振動特性は、構造寸法に加えて不純物拡散の濃度にも依存しているために,不純物濃度の拡散分布について調査を進めた.また,pnダイオード静電容量センサはビルトインポテンシャルを利用できるために振動子の逆バイアス電圧が不要になるという大変興味深い特徴をもつことから,ビルトインポテンシャル依存性を注意深く検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過去の研究成果の多大な蓄積により,デバイス設計および試作が非常に順調に進行した.続いて,以前に作製した評価装置を改良して評価装置の立ち上げをおこなったが,試作したデバイスの測定評価がかなり大変な作業になった.これは試作デバイスの出力信号が小さいために,測定装置の電気評価系ノイズを十分に除去することが必要になったためである.改良を進めた結果,必要なデータが蓄積できる水準となり,現在,これらデータを詳細に分析しているところである.
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今後の研究の推進方策 |
試作評価したデバイスの評価測定を継続して行い,実験データの蓄積を進める.これと並行して,ピエゾ接合センサの定量的な評価が記載されている論文(既発表,他者研究機関)をもとに,本研究で試作したデバイスに相当する値を計算で求める.そして,この計算データを本研究で取得したデータと比較して定量的な評価を行う.このようにして,pnダイオード静電容量センサの特徴をピエゾ接合センサと定量的に比較した研究成果をまとめ,論文として発表する.
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度は本研究の初年度であり,本研究は3年間を予定している. さて,前年度の3月に最新研究成果調査のために旅費が発生したが,この旅費に不足分が生じた.この不足分を次年度予算から支払うことにしたため,当該年度の予算を全額執行しないで,次年度使用として予算に計上することにした.
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