研究課題/領域番号 |
21K04859
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
伊藤 啓太 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (70791763)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 異常ネルンスト効果 / 窒化物 |
研究実績の概要 |
令和3年度は、MgAl2O4(001)基板上へのFe4-xNixN薄膜のエピタキシャル成長と異常ネルンスト効果の評価に取り組んだ。金属原料は電子線蒸着銃、窒素は高周波プラズマガンを用いて供給し、成膜温度は過去の研究例を参考にして450℃とした。組成比xは蒸着レートの制御により、キュリー温度が室温以上となる0≦x≦2.8の範囲で変えた。反射高速電子回折およびX線回折測定により構造を評価した結果、エピタキシャル成長を確認できた。作製した試料を微細加工によりホールバー形状に加工し、ゼーベック効果、異常ネルンスト効果、異常ホール効果を評価した。結果、Ni添加量の増加に伴い、異常ネルンスト係数は減少した。これは、Ni添加による熱電気テンソル非対角項の減少に起因しており、Fe4NへのNi添加では、異常ネルンスト効果は増強されないことが分かった。 上記に加えて、Fe4Nにおける異常ネルンスト係数の成長基板依存性を調べた。MgO(001)、MgAl2O4(001)、SrTiO3(001)基板上に、Fe4N薄膜をエピタキシャル成長した。Fe4-xNixN薄膜と同様の手法を用いて、ゼーベック効果、異常ネルンスト効果、異常ホール効果を評価した結果、SrTiO3(001)基板上のFe4N薄膜において、その他の基板上の試料の2倍程度の大きさの異常ネルンスト係数を実現した。これは、SrTiO3(001)基板の表面付近に酸素空孔が形成され、酸素欠損領域において比較的大きなゼーベック効果が発現し、それにより生じた電流がFe4N層へと流れ込み、異常ホール効果により横方向電流へと変換された結果と考えられる。これは、ゼーベック係数が大きな材料を基板表面付近に形成することで、隣接する強磁性体薄膜の異常ネルンスト効果が増強できることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Fe4-xNixN薄膜の作製および異常ネルンスト効果の評価に成功したことに加え、Fe4N薄膜におけるSrTiO3基板の使用による、異常ネルンスト効果の増大を発見したため、当初の計画以上の進展があったと言える。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度はFe4NへのNi以外の第三元素添加実験に取り組み、異常ネルンスト効果の増大を試みる。加えて、令和5年度の実施を計画していた非磁性体材料との多層構造の作製についても、前倒しで取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加学会がオンライン開催となり、旅費を使用しなかったため、次年度使用額が生じた。来年度の学会参加旅費の一部として使用する予定である。
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