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2023 年度 実施状況報告書

部分溶融による精密合成が拓くルテニウム系銅酸化物磁性超伝導体単結晶の構造的理解

研究課題

研究課題/領域番号 21K04860
研究機関宇都宮大学

研究代表者

八巻 和宏  宇都宮大学, 工学部, 准教授 (90579757)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード超伝導 / 単結晶 / ルテニウム系銅酸化物 / 銅酸化物高温超伝導体 / 固有ジョセフソン接合 / 圧力高温合成
研究実績の概要

本研究の目的は超伝導と磁性が共存し結晶構造内部に超伝導層(S)/(反)強磁性層(F)/超伝導層(S)が原子層のオーダで積層した接合(SFS接合)を含有する新奇固有ジョセフソン接合として期待されるルテニウム系銅酸化物高温超伝導体「単結晶」を申請者が独自に開発してきた「部分溶融法」により合成すること,特に,化学・物理の2つの圧力効果を積極的に活用した精密合成によって,この系の超伝導転移温度を上昇させることである.
当該年度は特に物理圧力効果に着目して超小型加圧炉を用いた数気圧下でのルテニウム系銅酸化物磁性超伝導体RuGd-1212の合成に取り組んだ.得られた成果は以下の通りである.
(1)部分的な溶融を促す焼成時間t_1の最適(長時間)化によって単結晶の粒径を50-100ミクロン程度大きくすることに成功した.これは2気圧で加圧することで1212相の分解温度が抑制されたためと考えられる.
(2)更に印加圧力を上昇させ,合成条件の最適化に取り組んだ結果,3気圧下で結晶粒径400ミクロン程度,超伝導転移温度Tc-onset=55.9 K,Tcoffset=17.6 Kとこの系における本研究室で得られていた特性を大きく上回る試料の合成に成功した.
上記の成果,特に400ミクロン大まで結晶粒が大型化したことで,単結晶試料を取り出しての基礎特性評価を進められる目途が一定程度,立ったことは大きな進展である.一方で,本研究で導入した超小型加圧炉を用いた場合,単結晶の表面平滑性が従来のシリコニット管状炉に比べて悪いという新たな問題も明らかになった.次年度以降は大型化と表面平滑性に留意しつつ,単結晶試料を用いた異方性などの評価を進める予定である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

新型コロナウィルス感染症に伴う研究室の閉鎖が数回あり,研究の進展が遅れた.2023年度以降は平常化に向かい,本研究に関しても今回,研究実績で述べた通り,単結晶粒の大型化といった確かな成果が得られるに至った.研究の進展にやや遅れは見られるものの,単結晶粒を取り出して評価できる目途を付けることができた点は大きな進展で今後,一層の進展を図る.

今後の研究の推進方策

研究実績で述べた通り,ルテニウム系銅酸化物は非常に単結晶の合成が難しいものの,単結晶粒の大きさを従来の200ミクロン弱程度から400ミクロン大まで大型化することに成功した.当該試料は超伝導性を保っていることから従来問題となっていた,結晶粒の大型化に伴う超伝導性の消失には該当しない.その一方で,試料表面の平滑性が従来のシリコニット管状炉で合成した試料に比べ悪いという新たな問題点も明らかになった.今後は大型化に成功した条件を中心により表面状態の良い,平滑な単結晶粒の合成に取り組むとともに,大型化に成功した多結晶試料から単結晶粒を取り出し,異方性を始めとする基礎特性を評価する.最終的にはc軸方向の伝導特性評価からルテニウム系銅酸化物の固有接合特性に関する評価を進める予定である.

次年度使用額が生じた理由

円安による資材価格の高騰などにより装置の調達価格が見積り時点で想定よりも高額になった.業者に再見積もりもお願いしたものの,価格の高騰はいかんともし難く,研究手法に若干の変更・検討を余儀なくされた.コロナウイルス感染症などの影響もあり研究自体の進展が遅れていたこともあり,次年度以降に繰越が生じた.次年度は最終年度となるため,早期の執行,研究計画の適切な遂行を進める予定である.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2024 2023

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 数気圧下での GdSr2RuCu2O8-δ単結晶の合成条件最適化2024

    • 著者名/発表者名
      丸山光一、八巻和宏、入江晃亘
    • 学会等名
      2024年 第71回 応用物理学会 春季学術講演会
  • [学会発表] 昇華法によるRuO2単結晶の合成2023

    • 著者名/発表者名
      八巻和宏、入江晃亘
    • 学会等名
      2023年 第84回 応用物理学会 秋季学術講演会

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公開日: 2024-12-25  

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