カルコゲナイド半導体は、次世代相変化メモリ・セレクタや神経細胞を模したニューロモーフィックシステムへの応用が期待されている。デバイス動作時の抵抗遷移過程を理解し、高性能化・信頼性向上を実現するには、キャリア特性に関与する局在準位情報が必要不可欠である。一方、一般的な局在準位評価法はこれらの材料に適用しにくい課題がある。そこで、相変化メモリ・セレクタ材料に適した赤外光熱偏向分光法を開発し、これらの材料の局在準位評価を行う。 今年度は引き続き光熱偏向分光システムの改良を行うとともに、カルコゲナイド薄膜の作製と局在準位の評価を行った。システムの励起光周波数を安定化し、ノイズの低減に取り組んだ。また、励起光の集光方法として、楕円面鏡、サファイアレンズと凹面鏡の検討を行った。システムの信頼性の視点から、サファイアレンズと凹面鏡による集光方式を採用した。この改良により波長5000 nm(光エネルギー0.25 eV)までの励起光の安定性が向上した。さらにバックグランド信号の少ないサファイア基板を用いることで、波長5000 nmまでの評価が可能となった。今後の課題は、一部に残るバックグランドを適切に除去する解析方法の開発である。これらの改良により、アモルファスカルコゲナイド薄膜の低密度欠陥や不純物の定量が可能となった。 直流スパッタ装置によりGe2Sb2Te5薄膜を、真空蒸着装置によりSn-Se、In-Se薄膜を作製した。サファイア基板を用いることで、波長5000 nmまでの弱吸収を評価した。そして、バックグランドと弱吸収を分離し、局在準位情報を含む状態密度モデルを考案した。 研究成果の一部をJJAPなどに投稿し、相変化研究会PCOS2023、応用物理学会学術講演会で発表した。
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