研究実績の概要 |
二価鉄を導入した積層構造バリウム・鉄酸化物の作製を試みた。具体的には、Rブロック・Sブロックの交互積層構造をとるM型フェライトならびにBa-Fe-Ti酸化物に対し、Ti4+イオンおよびFe2+イオンの導入を試みた。試料の組成および焼成温度をコントロールすることにより、積層結晶構造単相の生成条件を探索した。 原料としてBaCO3, α-Fe2O3, ZnO, TiO2, Fe3O4 を用いて、目的の化学量論組成になるように秤量した。これらのうち二価鉄を含まない原料(Fe3O4以外)を湿式混合した原料粉を900°Cで仮焼成した。仮焼成後、遊星ボールミルで粉砕した。二価鉄原料であるFe3O4を加え、加圧成形し、石英管に真空封入した。その石英管を1000~1200°Cで5時間本焼成し、試料を作製した。試料の結晶構造をX線回折(XRD)によって同定した。 その結果、Fe2+, Ti置換したM型フェライトならびにBa-Fe-Ti酸化物の作製に成功した。置換によるキュリー点の系統的変化を観測した。これは、非磁性イオンであるTiを導入した効果に相当する。この二価鉄を導入したM型フェライト構造に絶縁障壁となる非磁性ブロックの導入を狙い、Alも導入し、この試料について、強磁場磁気測定を行った。 また、鉄酸化物探索の過程で、大きな磁化を示すカルシウム鉄スピネルを見出した。このスピネルは真空封入で作製したものでなく大気中焼成で作製したにも関わらず、二価鉄を含有していることも判明した。このような物質探索は、新材料開発研究の礎石となるものであり、重要なものである。
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