研究実績の概要 |
二価鉄を導入した積層構造Ba-Fe-Ti酸化物ならびに18H型六方晶フェライトの作製を試みた。試料の組成、焼成温度、および封入管内圧をコントロールすることにより、積層結晶構造単相の生成条件を探索した。 原料としてBaCO3,α-Fe2O3,ZnO,TiO2,Fe3O4を用いて、目的の化学量論組成になるように秤量した。これらのうち二価鉄を含まない原料(Fe3O4以外)を遊星ボールミルで湿式粉砕混合した原料粉を900°Cで仮焼成した。仮焼成後、二価鉄原料であるFe3O4を加え、加圧成形し、石英管に真空封入した。その石英管を1000~1200°Cで5時間本焼成し、試料を作製した。試料の結晶構造をX線回折(XRD)によって同定した。 その結果、二価鉄-四価チタン置換した18H型六方晶フェライトならびにBa-Fe-Ti酸化物の作製に成功した。18H型フェライトが生成するのは限られた組成のみであった。温度・組成・封入管内圧条件の最適化が必要である。Ba-Fe-Ti酸化物に関しては、二価鉄-四価チタン置換による低温自発磁化の向上を観測した。これは、非磁性イオンであるチタンが下向きスピンサイトに入ったものと考えられる。今後、中性子回折による機器構造の決定が期待される。 また、鉄酸化物探索の過程で、結晶構造データベース・パウダーディフラクションファイルに掲載されていないバリウムリチウム鉄酸化物を見出した。酸化バリウム-酸化リチウム-酸化鉄3元系相図上でこの酸化物の生成条件を決定し、単結晶を作製し構造を特定した。このような物質探索は、新材料開発研究の礎石となるものであり、重要なものである。
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