研究実績の概要 |
本研究は68℃付近で絶縁体-金属転移(Insulator-metal transition: IMT)を示す二酸化バナジウム(VO2)薄膜をパターニングしたメタ表面を用いてテラヘルツ波の透過偏光制御に繋がる基礎研究として実施するものである。3年間の研究実施期間において、パターニング電極を持つVO2薄膜の電圧印加スイッチング及び自励発振の実現を探索する。 研究初年度の2021年度は、スパッタ成膜したVO2薄膜に対して研究分担者がTi/Au電極を堆積し電極幅5000μm,電極間ギャップ10μmの対向電極を有するプレーナ型素子を作製し電気的特性を評価した。その結果11 V, 200 mAにおいて電圧印加スイッチングが発現したがジュール発熱が大きく自励発振に至らなかった。2年目の2022年度は導電性ITO上へVO2薄膜を堆積した積層型構造において2V, 30μA程度の低電圧、低電流でのスイッチングに基ずく発振を生成した。積層型での発振特性がプレーナー型での発振発現に繋がると期待した。 2023年度は、2021年度の結果を踏まえて改めて作製したプレーナ型素子を用いて発振実験に取り組んだ。VO2薄膜の膜厚を100 nm程度とより薄くして抵抗値を高めた結果、11V, 8 mAにおいて初の自励発振を観測した。この発振は電圧源として50Hz正弦波交流を発生するカーブトレーサ―を導入して観測でき、正弦波電圧により効率的に発振を実現できることが判明した。発振周波数は50 Hzに比べ2桁以上高い数K~数十KHzであるため、発振波形の電源電圧依存性を連続的にモニターできる大きな利点を有する。この実験方法の進展を基にプレーナー型構造の発振特性の電源電圧及び並列キャパシタンス依存性を詳細に調べ、2023年秋の日本表面真空学会、2024年春の応用物理学会で成果発表を行った。
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